バルセロナ建築漫遊記・未来へ

バルセロナから未来への気ままな発信です。
ついに完成!バイス三兄弟セルフビルドプロジェクト 31   『この建築を造ったことを誇りに思う。』

 とにかく激動の年で大変であったが今年も残すところ2日を切った。

地震、津波、原発のとてつもない日本の大災害。
ジャスミン革命と呼ばれカダフィら独裁者が市民により殺され、次々と追放されたアラブの春。
スペインのマドリッドの中心プエルタ・デ・ソルで始まった”indignados"=怒る市民たちがバルセロナのカタルーニャ広場にも広がり、この動きがニューヨーク、日本の反原発運動にまで世界中に拡大。
ギリシアの財政破綻から始まったユーロの危機。

このヨーロッパの危機的状況でスペイン大不況の中、バイス三兄弟プロジェクトの工事継続が危ぶまれていたが、ついに完成した!

建築確認=VISADOが承認され、建築許可が出たのが2006年9月4日。
建築工事開始が8日後の9月12日。
それから2回の建築許可の更新を経て、6年後の丁度一ヶ月前の11月30日に工事完了届=Final de obraとなった。



迷った末、最後には屋根をZINCの黒して一段と締まった外観となる。


サロン部分には、手水鉢の泉をデザインしチョコッと和風にする。
玄関の扉を開けると5m天井の高いボールトで和風の坪庭を透かし、
プール、遠景には松林が広がるという奥行きのある空間となっている。

バイス三兄弟のブログは今回で31回目となり、読み返してみると皆で『建築を創る!』という熱い想いが伝わってくる良い記録となっていると思う。




玄関入口アプローチ部分。


左は勝手口。右の扉はプールのある庭に繋がる。



先日4ヶ月ぶりに降った雨で、陸屋根の各ガーゴイル=雨樋口から円形の鉄枠に敷いてあるコレクターの大理石の玉石に滝の如く雨水が落ち、ろ過されプールサイドの地下に作られた雨水貯水槽3x5x3m=45m3に蓄えられ、ほぼ満杯になった。

7X14mの自慢の曲面大屋根からも樋はあえて付けないで雨水を直接テラスに落とし、その下の玉石の部分がコレクターとなっている。
この建築は雨水利用のエコシステムの性能が優れていることも実証できた。



右が三兄弟、次男ホセ。右はパパ。

『この建築を造ったことを誇りに思う。』とバイス三兄弟のパパは言った。
この写真からも誇りと自信がうかがえる。
この大不況をものともせず、6年の長い時間諦めないでセルフビルドでコツコツと完成することができたのは、この建築にかける想いであったのだ。
本当にこの建築をデザインし、限られた予算の中で一緒に現場で考えながら、その都度彼等にもできる合理的建築方法を見つけ出して、フィードバックを繰り返しながら、らせん状に登りつめてきたという感覚である。

スローな建築であったが、今までの住宅にはないモダンでオリジナルな美しいフォルムの建築に仕上がったことに大変満足している。
彼等は今の建設のプロ以上のものをこの建築と共に学んできている。
本当の建築を創っていくには時間がかかるのが体で解っているのは、ガウディの生地、ローマ建築を造ってきたタラゴナ人の伝統=建築のDNAとも呼べるものなのであろうか。

『建築の合理性とは、建築形態がその機能を満たす要求と建設手段の合理性を追求した結果によるもので、それが真実のフォルムであり、独創性=建築芸術となるのである。』
今、現在のそれぞれの建築環境、条件の中で徹底的に合理性を追求したものだけが真のフォルムを持つという、19世紀の建築理論家ヴィオレ=ル=デュクの教えである。
このことが建築=arquitecturaの原点で、これからの新しい建築芸術を創り上げるということが確認できた。

スペインで真の建築を追って25年、やっとここまでくることができた。
まだまだ建築の普遍性を探求する道は長い。始まったばかりだ。
これからに期待しよう。

それでは良いお年を!

| U1 | バイスの三兄弟セルフビルトプロジェクト  | 13:32 | comments(0) | trackbacks(0) | -
バイス三兄弟セルフビルドプロジェクト 30           『生きる』喜び=『建築できる』喜び
バイス三兄弟セルフビルドは今年で6年目を迎えた。
今回でちょうど30回目のプログで、このブログ『バルセロナ漫遊記』の歴史にもなっている。

昨年中の完成を目指していたが、2週間ほど前にジョセップから連絡があり、夏休み前には終わりそうだから見にきてくれと連絡があった。

そして先週の水曜日、18日に現場に行った。
先回のバイス三兄弟のプログは昨年4月18日なので、1年1ヶ月ぶりの現場である。私も実はこの1年間体調を崩し手術のために病院の入退院を繰り返していたので、久しぶりのまぶしい建築現場であった。

長男のジョルディと次男のジョセップが迎えてくれた。
「一ヶ月前に3度目の手術を行い、それが5時間を超える大手術でたいへんでね、何とか生き残ってここに戻ってこれたよ。今は運転もできるし、松葉杖無しでちゃんと歩けるだろ。ほら、この様にね。」という感じで、近況を説明する。
「自分達もこの大不況の中、ようやく重機の仕事を見つけ一息つき、そしてまたここを続けることことができて、もうすぐ終わらせることができそう。プールよくできただろう。とにかく今は弟のジョセップと二人でやっているので、やることが多くて。」
と、やっと工事の終わりが見えてきたとジョルディが嬉しそうに話す。

お互いにこのセルフビルドプロジェクトで『生きる』喜び、『建築できる』喜びを共有できた。

よって、我々にとって『生きる』=『建築できる』なのである。
現在では忘れられている建築本来の姿がそこにはある。

 
SPA付のプールが完成していた。
全て兄弟の手作りだ。不成形のプールを丁寧に愛情を持って、今の職人以上の仕事をしている。
テラスとプールの間は芝生を植える予定なので、建物+芝生のグリーン+プール+松林で一体化した素晴らしい空間になるだろう。


フラットルーフに付けられた3つのガーゴイル(樋の吐水口)の真下には円形の排水口があり、ここには大理石の丸石を敷き詰め庭を少しデザインする。ここに落ちた雨水はフィルターを通して浄化され、プール横の貯水槽に行くエコシステムになっている。


門扉を入った所には枕木で植え込みを作る。ここにはあまり手のかからなく丈夫で安価な竹を植えようということになった。竹を植えることによって、和風の露地空間を楽しめる。


天窓にはガラスが入り、真下には泉のある坪庭を創る。7mスパンのなだらかな曲面ボールトで、それを大きな緑の玄晶石の石板壁によって、しっかり支えている。この石板壁がアクセントになり空間に緊張感を与えている。天井高は5mあり、広々とすっきりとした『明るい部屋』になっている。昼の長いスペインの今の時期、電気無しで10時までこの部屋で作業ができる。またエアコンの送風口が二つ付いているが、30cmの厚い断熱レンガ壁なので涼しく、松林からの心地良い風が通り、冷房なしでシエスタにとてもよく快適だとジョルディが言っていた。

パッシプエコ建築になっていて本当の省エネ建築であることが実証された。
パッシブエコとは、敷地の自然・環境の持つエネルギー効率を第一に考えた機械設備機器に頼らない建築的解決方法のことである。
それが基にあって、機械設備機器のアクティブエコを考えていけば最大限のエコ建築をつくることができるのである。例えば、この南面の7x14mのボールト大屋根に太陽光パネルを貼り付ければ効果的というように、これからはエコ建築作りが重要となってくるだろう。
乾燥した熱い太陽の照りつける長い夏のあるスペインでは特に有効である。


新しい門扉ができていた。
十字形に鉄板を切り取り、中心は円形になっている。
ジョセップが考えてこの様にデザインし自分で創ったらしい。
セルフビルドの現場から出てきた単純で合理的なデザインである。
この地の十字軍テンプル騎士団に無意識に由来しているのかもしれない。

この鉄板を切り取った所にくもりガラスを嵌め込むようにしたいのだが、色をまだ決めていないので考えてほしいと言われたので、背景の建築はかなり抑えられた色なので少し派手目の色、例えばワインレッドがいいのではと答える。玄関扉は地中海に浮かぶ月とすると、右の車庫の大扉は太陽かな。そうすると、左は月の円で黄色の色ガラス。右は太陽の円で赤の色ガラスというようにとデザインのイメージが膨らんできた。

セルフビルドの現場から生れ出たデザインを発展させるのは真の建築デザインであるということを、石山さんの所でやった松葉邸セルフビルドプロジェクトで28年前に学んだ。
いわゆる今流行している何々風スタイル、デザインの為のデザインなどは、少し時間が経てば古臭く感じてしまう。

長男のジョルディは、この建物建て初めて6年経っているけれども古く感じない。かえって後で建った隣の建物の方が古く感じると言う。

それはオリジナルデザインを、さらにセルフビルドで建築に愛情を持って、時間をかけて丁寧に創ってきているという建設方式にもよっていることなのであると考える。

あと2ヶ月で完成するのはうれしいけど、この6年かかったセルフビルドが終わってしまうという寂しさがある。

アーキテクトとビルダー+施主が『建築する』プロセスを楽しむ、スローで濃密な時間であった。6年というこの建築する時間はけっして長い時間だったとは思わない。

このアーキテクトビルダによるセルフビルド建築方式を使った復興・街づくりの新しい手法として取り入れ、『おらが街』を時間をかけてそのプロセスを楽しみながら、日本全体で協力し合い創って行けたら日本の素晴らしい未来があるのではと思う。
是非、石山さんには頑張ってほしい。

次はお披露目でプールサイドでパーティをするので海水パンツ持参で集まろうということになり、その後はバルセロナの日本食レストランで御馳走してくれるとの約束をした。

『生きる』喜びと『建築できる』喜びを与えてくれた、この大地に根付く『野太い建築』が完成するのが楽しみである。
| U1 | バイスの三兄弟セルフビルトプロジェクト  | 16:20 | comments(0) | trackbacks(0) | -
バイス三兄弟のセルフビルド再開 29

スペインの建築大不況のあおりを受けて昨年夏から工事が止まっていたバイス三兄弟セルフビルドプロジェクト


銀行の融資の目途が立ちそうなので再開し、この秋には完成させたいとの連絡があり久しぶりに現場へ行く。

プールと外構工事は細々と続けていたので仕上がってきている感じで、今年で5年目となるが、ますます建築としての魅力が増してきているように思える。
 


三兄弟のジョセップが送ってきてくれた大雪の時の現場の写メール。



玄関前のアクセスに錆の入ったスレートの自然石が貼られいい感じになってきた。



奥が玄関で手前が勝手口。





スレート自然石の基壇で緩やかな屋根ボールトのフォルムが引き立ってエレガントさを増してきたような気がする。

三兄弟は自分たちで建てているこのオリジナルな家が大変気に入っていて誇らしげである。
先日、銀行の建物鑑定士が来て土地、庭、プールを含まないこの建物の評価が5000万円という。
それで今回完成する為のローンが組めることになった。

素人のセルフビルドでこの商品価値を生み出しているのであるから良い投資にもなっている。

そのプロジェクトを計画し、無から有を生む建築家の仕事のコストパフォーマンスももう少し良くなればありがたいのであるが・・・

でも、まあ、手のかかる子=自分の建築作品であるのでしょうがないと思うようになってきた。



天窓で大ボールトサロン内は明るく広々として見える。



大ボールトのサロン −> 大庇+テラス(軒下空間) プール(庭空間) <− 松林 と外部の自然を内に引き寄せ融合する日本的エコ空間がコンセプトになっている。


| U1 | バイスの三兄弟セルフビルトプロジェクト  | 03:21 | comments(0) | trackbacks(0) | -
バイス三兄弟セルフビルドプロジェクト28−建築工事ほぼ完成−
暑中お見舞い申し上げます。

 

8月に入っての最初の週末。プールには真夏の太陽がカッと照りつけている。
私の住むピソ(スペイン集合住宅)のプールで昼過ぎまで一人のんびりと泳ぐ。子供たちのいるファミリーはバカンス旅行でいなくなるので、この時期が一番静かに泳ぐことができる。

私の住むサンクガットの商店街も夏のバカンスで一ヶ月の休みとなり、一気にまったりとしたスペインの夏のバカンスの始まりである。

先日、久しぶりにバイス3兄弟の現場へ行く。3兄弟のパパも出迎えてくれる。

アルミサッシは全部入り建築の外観は屋根を除きほぼ完成している。







プールもレンガを積んで形ができていて完成間近と言う感じで外構工事がかなり進んでいた。
また、雨水を集め、大から小への砂利とフィルターの下に穴開きPC管を設置した濾過装置を通して大きめの地下貯水槽(5mX4mX3m)に導くエコシステムが完成していた。

建物内に入ると天井が高くサロンの広々とした空間が心地よい。
屋内を北からのそよ風が通り抜け、暑い陽射しの屋外と違ってとても涼しく、クラーも必要ないほどである。
天窓は塞いである状態だが十分明るい。借景となっている松林へと抜ける南北の軸線・・・     しばらくこの空間に浸りきる。



すると3兄弟のパパに、「ここへ来る人誰もが素晴らしいととても気に入ってくれています。」と建築家冥利に尽きるお言葉をいただく。

「Muchas gracias.(ありがとう)」





しかし、床、電気、設備等の費用のかかるインテリア工事はストップした状態である。ジョルディによると、やっとここまで来たのに、この経済危機のあおりを受けて銀行がお金を貸してくれないのだという。

このままだと売りに出すしかないと不安そうであった。特に彼の場合、重機のオペレーターをしているのでこの景気の落ち込みは深刻なものがある。

今は我慢の時だ。何とかこの100年に一度と言われる経済危機を乗り越えたいものだ。



| U1 | バイスの三兄弟セルフビルトプロジェクト  | 16:50 | comments(0) | trackbacks(0) | -
バイス3兄弟セルフビルドプロジェクト 27           −冬眠から目覚めた蟻の如く−
先週、桜満開の日本から戻ってきた。

バルセロナも春になり、いろいろな色の花が咲き始め、野山の蟻も忙しく働き始めている。

不況のあおりを受け、『カタツムリのように冬眠中』であったバイス3兄弟セルフビルドプロジェクトは、春を迎えると一気に『冬眠から目覚めた蟻の如く』また動き出した。

昨日は久しぶりに3兄弟の現場へ行った。
アルミサッシと3枚の合わせガラス(3mm厚のガラスを3枚使い2つの空気層を作る断熱性能の高いもの)と自動開閉式シャッターが入り、いきなり完成の姿に近づいた。



頼もしくなったわが子を見るような想いで本当にKAWAIIく思う。



3兄弟のパパも応援に駆けつけ今度はプールを息子たちとセルフビルドしているところだ。
喜んで私を出迎えてくれ、自分たちの手でここまで創ったこの建築にとても満足している様子であった。



家族一丸となって自分たちの手で家を創る喜びと幸せを感じ、これぞ家創りの理想を見ることができる。



いろいろたいへんなことが多いが、建築をやってきて良かったと思う至福の時である。



サロン内部の上のほうに卵(huevo)の丸窓=牛の目(ojo de buey)が見える。
「この大屋根の曲線が深い庇となり、それを支える斜めの鉄柱の姿が好きだ。」と3兄弟の一番の働き手ホセは言う。

内部の電気工事、空調工事も始まり、この大不況の中、この建築に皆の想いを込めてまた力強く完成に向って動き始めた。

ガウディの言う『オリジナルの建築(arquitectura que volver el origen)』がもうすぐ完成しようとしている。

| U1 | バイスの三兄弟セルフビルトプロジェクト  | 18:13 | comments(0) | - | -
『まるでカタツムリのように』冬眠中?
あの強風から一週間が経った。
被害は友人宅にも拡がっている。

近くに住む友人夫婦宅の庭に植っていた15Mある糸杉の巨木が屋根に倒れかかっている。保険会社に連絡して一週間になるが、まだそのままの状態である。ようやく前の公園に倒れていたヒマラヤ杉の大木も、昨日チェンソーで切って丸太状態になった。しかしまだ撤去できずに放っておかれてある。公共施設でこの状態であるから個人宅ではさらに遅れるとのことである。
また、バルセロナ自治大学近くの松林の一軒家に住んでいる友人夫婦は、強風で松が倒れてくるのを目撃し、身の危険を感じて車で家から避難ようとしたが、車庫にも木が倒れてきて車が出せずに生きた心地がしなかったと言う。松の大木が根こそぎ倒れ、ガス、水道管等の埋管を持ち上げてしまって今も住める状態ではないので、3人の子供と一家5人父親の家に身を寄せている。

野球場の屋内体育館の惨事は、鉄骨でできた屋根が吹き飛ばされ、その後コンクリ−トブロック積みの壁が倒壊した。この建物は市の建築物であるのにもかかわらず、建築家協会への確認申請が出されておらず、市の技術者が建てた違法建築である疑いが出てきた。昨年、市の予算で改築する予定だったらしいが、そのお金が無くなってそのままになっていたらしい。これからその責任が究明されるはずである。4人の野球少年を奪ったその責任は重い。

バイス3兄弟のホセから連絡があった。この風で建設中の建物が壊れたのかと思って心配したが、えらく上機嫌で、松林の木がたくさん倒れ、隣の家の屋根の瓦も飛んで壊れたが、自分の所は全く被害がなかったという。
自分たちのセルフビルドの施工の正しさが実証されたのである。



左、建築技師のトマス  右、3兄弟セルフビルダーの次男ホセ
道路から玄関へのアクセス。『牛の目(タマゴ)』窓が正面ファサードのデザインのポイントとして効いている。



だんだんこのボールト屋根が馴染んできてモダンな感じになってくる。



ピスタチオグリーンの塗り壁と黒と緑泥色2色のピサーラ(自然石)を張り上げた凹凸のある壁。



大屋根ボールト内サロン。レンガ壁をハツリ、配線工事をする。その後、プラスター塗壁に仕上げる。天井が高いボールト空間に包まれて心地よい。まるでロマネスク教会内部にいるような感じ。



サロンからプール越しに松林を望む。松林が借景となっている。

この風で3兄弟ファミリーは重機のオペレーターとしてかなり仕事が入った様である。風が吹けば桶屋が儲かるとはよく言ったものだ。それで、セルフビルドの工事の方は、ほとんど『まるでカタツムリのように』冬眠状態でとなっている。
しかし、高騰していた値段のはるアルミサッシ、エアコンなど等の建築材料、電気設備がこの不況で値段がかなり下がってきたので、彼らにとっては、この不況が悪いだけではなくプラスのこともあるのである。

これも『カタツムリのようにマイペース』でセルフビルドで一生懸命真面目にやっているからこその、神様からのお恵みなのかもしれない。

ここまで来たら動きの良くなる春まで待つことにしよう。




| U1 | バイスの三兄弟セルフビルトプロジェクト  | 21:04 | comments(0) | - | -
バイス三兄弟セルフビルドプロジェクト 24  外壁塗装完成
外壁塗装工事が完成したと言うので、先週2ヶ月ぶりにバイス三兄弟の現場へ行ってきた。

前回のレンガ積みとブロック積みの荒々しい感じが消え、一気にモダンでエレガントな建築になった。



夏の強い光の中で見た見本の色と違い、少し渋めで落ち着いた感じであった。上品でエレガントな色調なのでまあこれも悪くないが、大ボールト屋根サロン部分のトーンをもう少しアップさせた方が良いと指示する。石張りの部分と色モルタル塗仕上げのコントラストと2色の塗り分けがモダンでオリジナルな建築デザインになっていてかなり成功しているように思う。







ここまで来れば、あともう一息である。アルミサッシを発注し、年を越して3月には完成しそうである。

アーキテクトビルダーによるオジリナルデザインの家が誕生すると思うと、今から完成が楽しみである。
| U1 | バイスの三兄弟セルフビルトプロジェクト  | 02:07 | comments(0) | - | -
バイス3兄弟セルフビルドプロジェクト 23          『カラコレスのように』マイペースであれ!
2か月程3兄弟からの連絡が途絶えていたが、次男のジョセップから久しぶりに連絡があった。

このところの世界的な経済危機のあおりを受け、スペインでも建設に減速感が出てきた。特にガソリンの値上がりは激しく、つい先日にはトラックの大規模なストがあり、スーパーから物がなくなるのではという心配から皆買い出しに走った。私も心配になり、ストがある前日にはガソリンスタンドの長い車の行列にならんだ。ストは2,3日で終ったので市民の生活にひどい影響は出ないで済んだのでまだよかったが、ガソリンの値段は日本円で160円から一挙に250円になってしまった。日本の200円どころの騒ぎではない。

やはりこのところの経済危機のあおりを受け、2ヶ月以上経っている割にはあまり工事は進んでいない。
心配が現実になり、バイス3兄弟の現場は『カラコレス(カタツムリ)のようにスローな』建設工事になっている。



カタツムリは、この地方(レリダ、タラゴナ)有名で、雨が降った後に、野原へ皆で取りに行き、それをニンニク、玉ネギ、オリーブオイルで炒めて、それを楊枝でほじって食べるという野性味のあるカタルーニャの郷土料理である。フランス料理のようにブドウの葉を食べさせ養殖し、ニンニクバターを詰めて焼いたような洒落たものでない。殻は茶色で厚く、その野性的な苦味が食べると病み付きになり、いつも40個ほどホジホジしてしまう。ガウディしかり、この地方には土着的で馴染みのものなのだ。サグラダ・ファミリアの外壁の彫刻にも彫られているぐらいなのである。それで『サグラダ・ファミリアのようだ』と『カラコレスのようだ』という形容詞は、カタルーニャではほぼ同じような意味で使われている。良い意味で理解すれば、それはマイペースで着実にやっているという意味だ。





黒と緑のピサーラを丁寧にいい感じに張り上げてある。素人ながらここまで来ると、そこらにいる職人よりも腕がいい。そのコントラストとINOXの目地調整の2本のメタリックなラインがディテールとして効いている。

2ヶ月ぶりに改めて見て回るとすごくこの建築に愛着を覚える。この建設が始まってから2年の時間が経過している。建設に関しては素人の彼らが、日本人の私のプロジェクトに従い皆で力を合わせ、セルフビルドでここまでやり遂げたのである。それも世界に一つしかない我々のオンリーワンの建築。建築デザインのオリジナリティーに於いてはナンバーワンの自負はある積もりでいる。

スローな建設であるからこそ現在の建築が忘れてしまっている建築本来の姿を見ることが出来るのである。与えられた条件、時間と共に変わっていく条件に誠実に真剣に対応し、フィードバック可能な建設体制で完成するまであきらめずに取り組めば、本当のレアルな建築が建ち上がる確信を得た。

このバイス3兄弟セルフビルドプロジェクトの建築的意味合は大きいと思う。石山修武さんの元で松葉邸のセルフビルドで学んだことの結論を、25年後、ガウディの生れ故郷であるこのタラゴナの土地に見出せたことが出来たことに、その因縁の深さを感じる。『建築教』のお陰であるのだろう。『建築』を諦めないでやってきて良かったと思う瞬間である。

長い間探してきた『自分にとっての本当(レアル)の建築』がこの写真のようにガウディと同郷のスペイン人の手で、オリジンの建築形態が建ち上がって来て、本当に完成が楽しみである。

スローな工事、『まるでカラコレスのように』マイペースであるからこそ、ここまで来れたことに感謝したい。








この大屋根ボールトのほぼ中央に開けられた天窓によって、建物内部はかなり明るい。その効果はまるでカタルーニャ中世ロマネスク教会に見られる天と地を繋ぐシンボリオ(cimborrio)のようだ。

ガウディはサグラダ・ファミリアの中央交差部にケルンの大聖堂を抜き、世界最高170Mのシンボリオを計画した。それは"Yo soy la luz del mundo(私は人類世界の光である。)"とキリストが言った様に、堂内に多くの光を入れようとしたことが、ゴシック建築様式を超えた新しいガウディのデザインとなった要因の一つであると思われる。

同時にこの実践を通し、ガウディのサグラダ・ファミリアの建築思想に付いても少しずつ理解を深めることが出来てきた。

そのうちに時間に余裕が出来たら、まだ謎の多い『ガウディの建築思想』を論文としても纏めてみたいと思う。
| U1 | バイスの三兄弟セルフビルトプロジェクト  | 10:51 | comments(0) | trackbacks(0) | -
バイス三兄弟セルフビルトプロジェクト22 牛の目窓から卵窓へ
先週、春の陽気の中、バイス三兄弟の現場へ行った。
このところの経済危機のあおりを受けて、長男のジョルディはバルセロナへ重機のオペレーターとして出稼ぎに行くことになった。そして、次男のジョセップが一人で工事をすることになったので、またスローなペースになった。そこが、融通の利くセルフビルドの良い所でもあるが、こちらとしてはそのスローな工事に付き合うことになる。



牛の目窓(ojo de buey)の人造石枠の詳細。この窓を覗くと南前庭のプールの為に掘られた穴が見える。
牛の目よりもかわいい卵の形に近いので、これからは卵窓(huevo)と呼ぶことにする。



屋上部分から卵窓の眺め。パラペット上部の押さえはこの卵窓から、放射されるようなイメージでコロナ(冠)状にこの白い人造石で回すアイディアが出てきた。分かるかな?このイメージ?



坪庭パティオ上部の天窓と卵窓のトップサイドライトで、光がいっぱいのボールト屋根内部、サロン・食堂。



外壁は、腰の部分に屋根材に使われるピサーラと呼ばれる黒い玄昌石をモルタルで貼って廻す。凹部に入り込んだ所には緑がかった自然石で壁一面に貼るというコントラストを付けデザインすることにする。
目地のが開口部と3cm程ずれてしまうので、INOXの目地を入れて調整し、それもついでに2本のINOXの水平ラインとしてデザインすることにした。アクセス部凸に出た部分も、同じ素材の緑がかった自然石を貼ることにより、凹にへこんだ部分が凸に出てきたという当初の建築フォルムのコンセプトが表現でき、面白いアイディアが出てきた。こういったディテールのアイディアは、現場で工事人、建築技師との話し合いの中から、建設の合理性の追求の結果、自然と湧き上がって来たものなので、建築デザイナーのエゴによるデザインの為のデザイン、スタイリストのデザインとは区別される。
グランカスカダのカーサ4のように、スタイリストによる金をかけたデザインの為のデザインは、パッと見はいいが、すぐ流行遅れとなり、退屈になり飽きてしまうであろう。
やはり、合理性追求の末に出てきたデザインこそが、本当のレアル(real)な建築デザインと言えるのではないかと思う。
| U1 | バイスの三兄弟セルフビルトプロジェクト  | 01:57 | comments(0) | trackbacks(0) | -
バイス三兄弟セルフビルドプロジェクト21            ojo de buey(牛の目)の窓
うちの横のサン・ホセ通りの八重桜の街路樹が満開となり、春本番となってきた。
それにしても今年のカタルーニャは雨が少なく、ダムの水の底がついてきたと毎日のように新聞一面に写真が掲載され、バルセロナ市内は給水制限が始まり、サグラダファミリアの前の公園の池の水もなくなった。このまま雨が降らないとホテルのプールの水もなくなって、観光客を受け入られなくなると深刻な状況になってきている。そして今、水量の多いエブロ川からバルセロナへ水を引く話が政治問題化している。
その春の陽気の中、バイス三兄弟の現場に行ってきた。
最後まで残っていた大屋根北側に付いたトップサイドライト、ojo de buey(牛の目)窓と呼んでいる楕円の開口部の枠が完成した。
この窓でサロンは18世紀カタルーニャバロックの礼拝堂のような空間に少し近づいたような気がする。
これで後はサッシを入れ、外壁を仕上げれば建築フォルムは完成である。

しかし、スペインでは2000年から続いてきた建築好況が、今年になり急に落ち込んできた来たのが気がかりな所である。


| U1 | バイスの三兄弟セルフビルトプロジェクト  | 21:01 | comments(0) | trackbacks(0) | -
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>

このページの先頭へ