バルセロナ建築漫遊記・未来へ

バルセロナから未来への気ままな発信です。
トーレヴィエハの巨大巻貝建築のその後



先週末アリカンテのドックショウに3匹のダルメシアンと行ってきたところであるが、その時2泊した所がブリーダーの友人のスイス人宅である。老後を気候が良く、ドイツ、フランス、イギリスの外国の年金生活者の多く住むトーレヴィエハの近くのゴルフ場の横に開発された住宅地に選んだという。
丁度2年前にアリカンテに行った時に伊東さんのスペインでの最初のプロジェクト、建設中のトーレヴィエハを見てきたとプログでも書いたが、その後どうなったか心配になったのでもう一度行ってみた。
2年前のブログには、
「そこにあったものは、現場にあったプロジェクト写真の巻貝状の美しい構造美とは対照的な、バラックとでもしか言いようのない施工精度の悪い構造物だった。探索の果てに得たものは、曰く言いがたいショック。

バレンシアの建築家との共同プロジェクトと明記されていたが、遠く離れたスペインの片田舎での建設の難しさを感じた。この国においては現場監理の徹底こそが、作品の質に繋がるのだという事を、旅の果てに実感した。」
と書いている。
http://u1architects.com/ultimas/torrevieja/index.htm

この2年間、このトーレヴィエハのリゾート地の悪いうわさが絶えなかったので特に気になっていたところである。市長が、このあたりの開発許可に絡み、業者から多額の賄賂を受け取っている事が明るみに出て裁判沙汰になっているということ。また建売住宅地の目に余る乱開発が進み、自然環境破壊が激しいとEUからも問題視されていること。町全体が下水処理場がなく悪臭がひどいこと。などが社会問題化していたのである。その中で訳の分からぬ日本人が建築プロジェクトを進めようにもうまく行かないことはスペイン国内から見れば分かりきっている。特にスペイン人は都合が悪くなると、相手を心配させないようにと好意からいくらでも嘘を付く。それがかえって自体を悪い方向へと向かわせる。言葉の問題もあるが、全てを信頼してしまう日本人の人の良さが裏目に出てしまうことがよくあるのである。実は私もこの苦い経験者の一人である。


この悪い予感は的中してしまったようである。建物のガラスは割られているし、工事は完全にストップし、そのまま放って置かれている状態であった。聞く所によると、この建設工事そのものが裁判になっているという。

目の前にある建物が巨大な巻貝から蝶のさなぎの抜け殻に思えてきた。美しいイメージと共にこのさなぎの殻を破り、スペインの青空高く舞い上がってしまったのだろうか?
| U1 | 伊東豊雄 | 20:38 | comments(0) | trackbacks(0) | -
建設中のサグラダ・ファミリア聖堂内での講演 



昨夕、工事中のサグラダ・ファミリア聖堂内で世界の建築家、伊東豊雄さんと建築構造エンジニアの佐々木睦朗さんの二人の組み合わせで大講演会が行われた。
建築には全く関係のないような着飾ったバルセロナの老夫婦の参加も多数あり、建設中の堂内は千人は超えるであろう聴衆で満員となった。
先回のブログにも書いたが、丁度10年前に2G『Toyo Ito SECCION 1997(伊東豊雄特集号)』のゲストエディターとして、『From eclectic to fusion(折衷から融合へ−ミースとガウディの間に−)』という巻頭論文の中で、仙台メディアテークの建築を『21世紀のサグラダ・ファミりア建築』を予感する建築として書いた。そしてその構造を担当した佐々木さんにもその論文を読んでいただき、同じような想いであのチューブをデザインされたとの返事をいただいたところであった。そういうこともあり、今回の講演は自分の10年前の予感が現実のものになったという感慨の深いものとなった。伊東さんも36年前、新婚旅行でまだ今ほど建設が進んでいなかったサグラダ・ファミリアを訪れ、まさかこの場所で講演をするなんて思っても見なかったと講演の冒頭で少し興奮した面持ちで述べられていた。
ここサグラダ・ファミリア聖堂内には、本尊ガウディの建築の神様が宿り給うのを実感した。
| U1 | 伊東豊雄 | 11:42 | comments(0) | trackbacks(0) | -
伊東豊雄 FIRA BCN 1fase 『kagamiwari』 オープニング

昨日は伊東豊雄のバルセロナでの最初の作品FIRA BARCELONA(バルセロナ国際見本市会場)の第一期工事が無事終了し、スペイン皇太子出席のもと公式オープニングが行われた。前回のブログ『川の流れのように』 伊東豊雄のバルセロナ国際見本市会場で紹介した。
午後9時過ぎからミースパビリオンで、日本的なオープンセレモニー『kagamiwari』(鏡割り)を行ったが、9時を回っているのに、このようにまだ明るい。ヨーロッパのこの時期はジュンブライドと言うだけあって、日本の梅雨とは違い気候がとても良い。本当に暮れそうで暮れない黄昏時なのでした。
そう言えば、11年前のこの時期この場所で伊東さんの建築パフォーマンスをAIU(世界建築家連合)のバルセロナ総会の企画としてオルガナイズしたのであるが、午後10時から始めることにした。聞きに来た人たちは、何でそんな遅くからと不思議に思ってやって来た。それも、この時期なかなか暗くならないことに由っていた。薄く水を張ったプール越しのトラバーチン大理石の壁(人が立っている向こうの壁)をスクリーンにして伊東さんの作品の野外上映会をする計画であったからである。一枚目の「横浜風の塔」の綺麗なイルミネーションのスライド写真が上映され、そのプールの水面に映し出された時の美しさは、ミースの建築空間と共鳴しあって幻想的で、ゾクゾクっとしてなんともいえない快楽感を覚えたのは今でも鮮明に自分の記憶の中に残っている。あれから11年が経ち、次の年には2Gの伊東豊雄特集号「SECCION 1997 Toyo Ito」をゲストエディターしたものが出版され、FIRA BARCELONAが指名設計コンペの形式で最優秀案に2001年に選ばれ、そして昨日ようやく第一期『川の流れのように』が完成をみた。
「あの時の講演が、私人生の最高の講演でした。」と伊東さん自身からお言葉を戴け、昨日は祝い酒は、自分にとってしみじみ感慨のこもったものとなった。
形にするまで苦労は多いが、建築芸術をやっていて救われる瞬間である。
それが明日、また建築へむかう力となる。
がんばろう!
| U1 | 伊東豊雄 | 18:29 | comments(0) | trackbacks(0) | -
『川の流れのように』 伊東豊雄のバルセロナ国際見本市会場



2年に一度のバルセロナ建築見本市”コンストラマット”が始まった。このメッセには6日間で24万人の入場者が見込まれている。
今年はちょっと様子が違う。先日、伊東豊雄さんの計画した入り口エントランスホールと2つのパビリオンとそれを結ぶ2kmの空中コレドールが完成したところだ。まだ、本人の名前を冠したツインタワー、"トーレ・Toyo Ito"と会議場の大物建築が現在建設中である。
http://www.u1architects.com/cgi/su3_diary/su3_diary.cgi
以前ここバルセロナメッセ会場で紹介した。
人と情報の流れを『川の流れのように』デザインしたもので、会場マップ(写真参照)を見ると良く分かる。かなり建設費を抑えているようで、当初原案のパースのように川の中を泳いでいる感じにはなれなかったが、それでもかなり合理的な工夫が凝らされていて、四角の窓のヘリは上と横の2面だけ水色に塗られている。光の反射で全面塗っているように見える。
バルセロナの都市計画規模の建築を最初のイメージ通りに建ってしまう伊東さんの凄さを思い知った。
| U1 | 伊東豊雄 | 01:18 | comments(0) | trackbacks(0) | -
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