先週、彫刻家の友人の展覧会が生れ故郷のTudelaであったので泊りがけで行ってきた。次の日の新聞には、彼の記事が大きく写真入で紹介され、その奥にはカメラを提げて展覧会を見ている私も写っていてインターナショナルな雰囲気の展覧会になっていた。
先回のブログ『モネオのふるさと Tudela』で紹介した、バルセロナから車で4時間程のナバーラ第二の町である。町はイベリア半島内陸部にあるが、13世紀、中世にはエブロ川の水運で地中海交易も盛んで、サンチャゴへの巡礼の道でもあったのでロマネスク建築はカタルーニャのものより大分規模が大きく立派なものである。しかし、今ではこれといった産業もないので、街並は昔のレンガ積みの建物とコンクリートの建物が雑然と入り混じったスペインの普通の地方都市といった感じである。
それでも牧歌的で自然に恵まれ、エブロ川沿いの肥沃な土地で取れる野菜が美味しくスペインで現在一番住みやすい地方と言われている。人々も、ゆったりとしていて豊かな感じがする。街にはどういうわけか、美味しいケーキ屋さんが多い甘党の町なのである。
その街の中にレンガ積みの立派な建物がある。今は市の博物館となっているが、元はあの世界の建築家、ラファエル・モネオ家のお屋敷だったそうである。(写真1)
友人の87歳のお母さんのお宅で、美味しい手料理をご馳走になったが、その話の中でお母さんの親戚がモネオ家との姻戚関係があるとのことで、第二の名字がVallesで同じだと話していた。そういえば、友人夫婦の子はバルセロナ工科大学、建築学部に行っているし、従兄弟はTudelaで建築事務所をやっているし、親戚にも建築関係が多い。ラファエル・モネオはこの町Tudelaの誇りとなっているのである。
つい先日、マドリッドのプラド美術館の大増築工事が完成して、国王出席の元、オープニングセレモニーが開催され、益々スペインの顔として登場する機会が増えてきた。私がガウディの次に知ったスペインの建築家はモネオ氏であった。筑波万博で働いていた85年当時、槙文彦事務所で働いていた青木淳さんにハーバードの建築学生を案内して欲しいと頼まれた。そして彼らを磯崎氏設計の筑波センタービルに案内して昼食をしていた時に、スペインへ留学する話をしたら、自分たちの先生がスペイン人建築家のラファエル・モネオで、その作品(メリダのローマ歴史博物館)がProgres Architecture誌に丁度掲載されたところだということがきっかけであった。当時、日本では全くといっていいほど知られていない存在であった。それから20年余りの年を経て、彼の生家を訪れることになったのである。下の写真は、Tudela唯一の彼の作品、高齢者の為のアパート。余り面白くない建物なので紹介されていないのではないかと思う。
プラド美術館のプロジェクトも終わり,少し手が空いてきたので,ふるさとTudelaにその豊潤なロマネスク建築を生かした文化施設のプロジェクトの話が動き出したという。
メリダの古代ローマ博物館を超える彼の建築に期待しよう。
Tudelaのお土産には、友人お勧めのトゥルハと呼ばれるチョコレートボンボンとメルカドで売られていてバルセロナではなかなか手に入らない新鮮な野菜、アチコリア、茎つきアーティチョーク、それにワインは地元の98年ものグランリザーブを荷物に一杯詰めて収穫の多い小旅行となった。