バルセロナ建築漫遊記・未来へ

バルセロナから未来への気ままな発信です。
歴史的建造物の保存と再生 1.セサール・マルティネイのワインのカテドラル

この秋晴れの週末、愛犬3匹を連れてタラゴナのマシアCan Collに一泊お泊まりした。
今回は田園ペンションの泊まり心地をチェックする目的もあった。

周囲には民家も道路も人通りもなく、見渡すかぎりブドウ畑の中にポツンと一軒だけ建っている。
築500年は経っていると思われる石積みのカタルーニャの古民家である。

1Mもある石積みの外壁の厚みに守られ、ケータイの電波も届かず虫の音、鳥のさえずりにも邪魔されることなく無音の一夜で、次の日、日の出の時に自然と目が覚めた。

日常の一切のストレスから解き離れ、今までにはなかったような不思議な体験であった。




ホームページでも紹介しているが、マシアCan Collは国や州政府の補助も受けず、『建築への愛情』と『建設への情熱』が予算、数々の条件などの困難をフィードバックしながら、なんとか最初のイメージを維持し続けクリアして行き、最後はクライアントと共にセルフビルドで朽ち果てた廃屋を5年かかって『カタルーニャのお宝』として今の時代に再生した。

この5年の月日は今を生きている私たちからすれば長い時間であるかもしれないが、このマシア建築の500年の歴史から考えたら短い時間である。

歴史に残る建築とは常にこのような見方が必要になってくると思う。

壊して新築(スクラップ&ビルド)すれば時間もかからず安く済むものを、あえて建物の歴史的価値を考え保存しようとする。しかし、最初にその歴史的価値を見出し、どのように残すかという一建築家個人の明確なイメージとそれを最後まで形にするという覚悟なくしては実現化は難しい。

歴史的建造物の保存再生は建築家という職業の問題ではなく、過去から未来へ繋ぐ鍛えられた歴史観に基づくイメージを持っているかどうかにかかっている。

そのイメージを実現化することこそが開発/保存の不毛な二元論を超える『本当(レアル)のルネサンス=再生』であると思う。





マシアCan Coll近くにあるバルバラ・デ・コンカのワインのカテドラル。




この時期やはりなんといってもタラゴナ地方にあるワイナリーめぐりである。
最近改築されたばかりのセサール=マルティネイのバルバラ・デ・コンカのワインのカテドラル
建物の中に売店を作り、そこからガラス越しに現在でも使用されているワイン醸造所が見学できる。
ここで5リットルのプラスティクに入った赤・白のテーブルワイン用の若いワインとこの地方でとれるアルベキーノ種と呼ばれる小粒のオリーブから搾り出した最上のバージンエキストラオイル5Lを買う。
そして、10年ぶりに改築後のワイン醸造所の中を特別に見せてもらう。

週末この村に住んでいる漫画家のカッファ夫妻とここで待ち合わせる。
彼の展覧会がこの前のバールレストランでやっているというので寄った。






カタランボールトで創られた片持ち梁の階段。



柱頭部分がモデルニスモ風の不思議な曲線のレンガ積みの柱。

| U1 | ワインのカテドラル | 11:10 | comments(0) | - | -
シャブリ(Chabris)は23年前パリでの思い出の味
昨日9月18日はバルセロナ到着23年の記念日。
フランスで買ってきた白ワインで二人で祝う。
23年前のちょうど2ヶ月後に生まれた息子は、今はイギリスの大学で建築を学んでいる。

思えば23年前、パリのカルチェラタン近くの市場で買ったシャブリ(Chabris)の味で本当のフランスを知ったような気がした。それまで日本で飲んできた白ワインとは比べものにならないくらい美味しかったのだ。ヨーロッパの本物の凄さをまず最初にシャブリから学んだのかもしれない。

それから、かなり走り込んであったルノー5の中古車を買い、車両保険に入る。車両保険の方が車の値段より高かったのでびっくりしたものだ。リモージュ、カルカッソンヌと2泊して、3日目の夕方ようやくバルセロナに着いた。当時のバルセロナはまだオリンピックが決まる前で、街全体が薄暗くゆったりとしていたのが印象的であった。あの時のガウディのカサ・ミラも黒ずんでいていて恐ろしいぐらいの迫力があったのを今でもはっきり憶えている。(オリンピック開催が決まってから、ファサードをジェットの圧力で水で洗い出し、今、日本の国会議事堂でもやっているように白っぽくきれいになった。)
今のバルセロナからはとても想像できない。まるで遠い昔の話のようである。

今思えば、あの時もデュクに導かれ、パリのノートルダム、カルカッソンヌ城を経て、ガウディの街、バルセロナに到着することができたのだなあと思う。

この街に23年も住み続けられている奇跡に乾杯。

そうそう、前回のプログでは家庭内反乱分子をヴェズレーの丘に残し、清貧修道会、シトー派の修道院を巡る建築探求の一人旅となったと書いた。

4時半にはピックアップに戻るということにして、素晴らしいプルゴーニュの風景の中を一人走る。途中分かれ道に、Chabrisの道路標示を見る。時計を見ると12時近くになっている。

自然と車は本当のフランスの本物の味を教えてくれたChabris方面へ向かっていた。

Chabrisの村の中心に入っていく。世界的に有名な所なのにフランスの田舎の普通の村という感じである。

観光案内所を発見。そこで地図をもらい、お兄さんお薦めのワイナリーを教えてもらう。すぐ近くに2,3軒老舗のがあるという。これがあのChabrisの白ワインの所だと思うとワクワクしてきた。

一人旅は気が楽である。

まずは最初の店に入る。石造りの古いワイナリーの壁一面にChabrisがびっしりと埋まっている。誰もいない。暫くして、回り階段からお姉さんが「ボンジュール」と降りてきた。

栓の開いた1er cruとChabrisを試飲する。せっかくなので、Gran cruも試飲してみることにする。ワイン保存庫から持って来たものを新しく栓を開けてくれた。まず彼女がテスティングして、「セ ボン」と言う。さすがに、前に飲んだものよりもきりりとしたあの美味しいシャブリであった。

せっかくここまで来たので記念にこれと同じものを買う。

昼飯の時間になったのでレストランを探す。地下のワインカーブを改築して洒落たレストランになっている。メニューを見ると、食事に合わせ、ここのワイナリーのChabrisを2種類飲ませてくれるとある。アクリルを使ったインテリアがよい雰囲気だったのでここに決める。







重厚な石積みボールトのワインカーブ空間に薄グリーンの透明アクリル板の椅子と机。白ワインのビンの色に合わせたおしゃれなインテリアである。フランス風のモダンな絵が気に入った。



フランスのエスカルゴは、スペインのカラコレスに比べると高貴な感じがして、カタツムリの王様。これにシャブリはよく合う。
至福モードでChabrisの村での昼食となる。

ブルゴーニュでの建築探求の一人旅は楽しい。








| U1 | ワインのカテドラル | 21:56 | comments(0) | - | -
ワインのカテドラルの原型発見! Sarral



更なるマルティネイのワインのカテドラルを訪ねて、バイス3兄弟の現場に行った後、付近の村々を見て回る。
Sarralの村へ寄ってみると、マルティネイのデザインとは少し異なったワイン醸造所の建物を発見した。レンガを使った縁取りなどより装飾的でモデルニスモに近く、プロポ−ションがポブレー修道院のようなカタルーニャゴシックである。開口部は、縦長の長方形の窓であるが、側面に廻ってみると、ゴシックの尖頭アーチの大窓が開いている。正面ファサードには1907年から2007年の100周年の垂幕が懸かっている。またよく見ると、左側のSINDICAT DE VINICULTORSのモザイクの紋章の中に1914の年号が入っている。マルティネイのワインのカテドラルは1918年以降のものなので、彼が改築したものではないことがわかる。
せっかくなので、ここの販売店でワインを買うことにして建物の中を見せてもらうことにした。売店の主人にこの建物を建てたのは、誰かを尋ねると、マルティネールではないDomenech i Rouraという返事が戻ってきた。ふーん、ドメニク・モンタネールとはまた別のDomenechなんだ。
建物内に入ってビックリ!レンガを積み上げた円柱の上に、レンガで組まれたアーチボールトの梁に垂木が渡され屋根を支えている大空間が広がっていた。この建築工法は、レンガ、石を組上げた天井ボールトに対して、バシリカといわれる。サンタ・クレウス、ポブレーの修道院にも修道士宿泊室にこの建築方法を使っているので、それをこのワイン貯蔵庫の空間に応用したものと思われる。このワインのカテドラルは、4年後の40ものワインのカテドラルを計画する上でのマルティネールの原型でお手本になったに違いない。
帰ってDomenech i Rouraを調べて見ると、名前がPereでガウディと並ぶ、あのモデルニスモの巨匠ドメニク・モンタネールの息子であることが分かり、世界遺産になっているサン・パウ病院は,父とのコラボであることが分かった。やはりただ者ではなかった!
Pereはマルティネイのバルセロナ建築学校の先輩でもあり、ガウディ、ドメニク・モンタネールのモデルニスモ後の次の世代として、これらワインのカテドラルを創ることで、新しい建築様式を模索している彼らの建築に対する熱い想いを感じることができた。
| U1 | ワインのカテドラル | 19:56 | comments(0) | trackbacks(0) | -
マルティネイのワインのカテドラル 7  El Pinell de Brai


フリーズ正面入口部分、ハビエル・ノゲス(Xavier Nogues)の村の様子をユーモラスたっぷりに描いた絵巻物風タイル

正面ファサードのこの醸造所の紋章絵タイルには1917年となっているので、この年から既にプロジェクトが絵タイルアーティストのノゲスとのコラボでやっていたことがわかる。建築ガイドブックによると1918−1922と4年間の歳月を費やしている。
この村は、バルセロナから遠く離れたエブロ川沿いの小さな村にもかかわらず、マルティネイとノゲスのコラボで、ワインのカテドラルの代表作と言われている。マルティネイの初期のプロジェクトを村のレンガ・石積み職人(alban~il)がコツコツと思考錯誤を重ねながら長い時間をかけて積んで行った感じである。バルセロナから遠い所にあるのでマルティネイの現場監理もままならず、材料はその地方に使われている伝統的な材料を使い、工事はかなりの部分を村のalban~ilに任せざる終えなかったと思われる。その為か、この地方の土着的な匂いのする建築に仕上がっている。またフリーズに貼られたノゲスのこの村のブドウの収穫、醸造、祭りの人々の酔払った様子までも描いた長い絵巻物風タイルが、このワインのカテドラルに彩りを添えている。
新しいNoucentistaの新世紀建築様式というよりも、マルティネイの建築学的デザインで、レンガ、石を合理的にに積み上げたもので、正しくカタルーニャの農村に根付いた土着的で伝統的な建築と言える。
| U1 | ワインのカテドラル | 17:43 | comments(0) | trackbacks(0) | -
マルティネイのワインのカテドラル6 Gandesa



このGandesaのワインのカテドラルは、、カタルーニャでも南西の端に位置し、サラゴサ、バレンシアの州境に近い山間にある。現在でも組合方式ワイン醸造所として機能しており、ワインのカテドラル40ある中で最大規模と思われる。最近モダンなワイン販売所(写真1)の建物が出来た所である。
カテナリー曲線のアーチ柱とボールトの建築構造で、先々回紹介したSant Cugatのものによく似ている。GandesaはSant Cugatの3年前1919に造られており、アーチ柱の高さと幅の比は、Gandesaが0.65と0.80を使っているのに対し、Sant Cugatの方は1.15である。つまり、Gandesaの方は丸みを持ったカテナリー曲線で、Sant Cugatのほうはよりシャープな曲線になっている。Sant Cugatの方は3年間の間に建築デザイン的にかなり進化したものになっていることが、この曲線のプロポ−ションを手掛かりに謎を解明することが出来た。
Gandesaの建築は、ガウディのカテナリー曲線のカタランレンガボールトの前衛的試みがなされたものであり、建築デザイン的にもマルティネイの力作である。そして、さらにその後の3年間でSant Cugatの全てが3次元までカテナリー曲線の建築へと統合が出来たと思われる。マルティネイはこの過程で、レンガ、石を使ったガウディのカテナリー曲線の技術的な面を支える弟子になりえたと考えられる。
つまり、Sant Cugatのワインのカテドラルはカタランレンガボールト建築の最終解であり、規模は大きくないがマルティネイの最高傑作であることが解った。
| U1 | ワインのカテドラル | 00:27 | comments(0) | trackbacks(0) | -
マルティネイのワインのカテドラル 5 Falset




カタルーニャの中にもいろいろワインの産地があるが、南西のタラゴナ地方のMontsant,Prioratが値段と味が今のところ信用できるので、最近はもっぱらこの地方のワインを愛飲している。
写真1は、Montsantで一番風光明媚といわれる、Siurana。ダム湖を臨む丘の岩の上に古くからの小さな村があり、かわいらしい12世紀のロマネスク教会と雄大な風景が絵になっている。
写真2はMontsantの切り立った山々。その前には2,3年前から新にブドウ畑が整備された。
写真3は、赤ブドウ。Montsantではほとんどが赤ワインで、ボルドーワインのカベルネ種の赤ブドウも作られているが、Tempranillo種、カタルューニャ固有のGarantxa種、最近ではSyrah種が流行である。このところ私は、Montsant独特のボディのしっかりした濃厚なワインとイベリコの生ハムBellotaの1+1=∞の味にはまっている。
Falsetのワインのカテドラルはこの地方の中心に位置する。ここにはマルティネイによって1919年作られたというアクリルのプレートの他にタイルによって当時からの表示もある。このワイン醸造所は、Sant Cugatのとはだいぶ異なっている。パラボリック曲線はどこにも使われておらず、この地方に普通に見られる伝統的な建築工法で、レンガで縁取られ、窓は細長い縦長の連続窓になっていて田園的なファサードのデザインになっている。
両者を比べると、Falsetが普通、自然であるのに対し、いかにSant Cugatの方が建築的に頑張っているかが解る。とても同じ建築家が設計したとは思えない。そこに、マルティネールが4,5年の間に40ものワインのカテドラルを造った秘密が隠されていると考える。
| U1 | ワインのカテドラル | 13:27 | comments(0) | trackbacks(0) | -
マルティネイのワインのカテドラル 4 Sant Cugat

写真の右側、白大理石板にセサール・マルティネイ通り、1888−1973 Arquitecteと彫られている。左の通り名はうちの前のアヴェニーダ・プラ・デル・ヴィニェット通りで、その意味は『ブドウ畑の丘』通り。セサール・マルティネイ通りの上に続く大通りは、アヴェニーダ・ガウディ通りで通りの名前にも歴史的背景、情景を考えて付けられている。そのマルティネイ通りを降りていくと、下の写真の今は機能していないワインのカテドラルへ辿り着く。


わが街サンクガット(Sant Cugat)にもワインのカテドラルがある。30年ぐらいまではバルセロナの郊外の村で、スペインで初めてのゴルフ場のあるお金持ちの別荘地として開けてきた。しかし、今ではティビダボ山を抜けるトンネルができ、バルセロナのベッドタウンの田園都市として発展している。この都市化のおかげで、現在ワインのカテドラルとして唯一機能していないものでないかと思う。
サンクガットのワインのカテドラル(組合方式ワイン醸造所)については、www.u1architects.com/catranarchitects/martinell/index.html
を参照のこと。
この歴史的建造物を市の博物館として再生するプロジェクトが現在進行中である。この地区が現在街の中心となり、モダンな新市庁舎、スポーツセンター、4つ星ホテルがオープンした所である。また、すぐ上の丘の上に建つロマネスクの修道院はレアルの冠を持ち、カタルーニャの宝として修道院博物館として再生された。
この歴史を生かしながらの『美しい』街づくりには日本は見習うべきものがあると思う。
| U1 | ワインのカテドラル | 16:59 | comments(0) | trackbacks(0) | -
マルティネイのワインのカテドラル 3  Aiguamurcia


このワインのカテドラルは、サンテス・クレウス修道院の隣のAiguamurciaという小さな村のものである。レンガで縁取りをして簡単に少しファサードをデザインしているが、開口部は全て半円アーチで、パラボリックでなく、ごく普通のカタルーニャ風民家の倉庫といった感じである。今が収穫時で、カタルーニャの発泡酒CAVA用の白ブドウ、シャドルネー種を満載したトラクターが忙しげに走り回っていた。

今では写真のようにCesar Martinell Valls1888-Barcelona1973 Arquitecteとセサール・マルティネイ 1888年バイス生れ1974年バルセロナ没 建築家のプロジェクトであるというプレート表示が40ものワインのカテドラルの入口に付けられている。私の住んでいる街には、通りの名前にもこの建築家の名前が付いているほど重要な存在である。1920年前後の4年間にこの地方を中心に40もの農業コーポラティププロジェクトを量産しているが、これだけのプロジェクトをどのようにして作ったのだろうか今まで謎であった。しかし、最近これらのワインのカテドラルを訪ねて見てその謎が解けてきた。
次回その謎を明らかにしていきたい。
| U1 | ワインのカテドラル | 16:47 | comments(0) | trackbacks(0) | -
マルティネイのワインのカテドラル 2 Vila Rodon~a



1920年当時、セザール・マルティネイによってこの地区に40ものワインのカテドラル、コーポラティブのワイナリーが計画されたと先々回紹介した。
バイス3兄弟の現場を訪れた帰り道、必ず寄る所がある。近くのVila Rodon~a村のワインのカテドラルである。この付近は、今が収穫の真っ盛りで、白ブドウを満載したトラクターが忙しげに走り回っていた。最近になってコーポラティブワイナリーの横に、ワインの販売だけでなく、この地方で取れる小粒のオリーブでアルベキーノ種と呼ばれる良質バージンオリーブオイル、濃厚な蜂蜜、ポリン、ローヤルゼリー、地元の味の濃いトマト、ジャガイモなどの野菜を売る店(写真1)ができた。私はこの店の良いお得意さんで、今回は、殻付きピーナッツを発見、それに赤ワイン一箱、スペインオムレツ用のジャガイモ一袋を買った。
今では、ここのマルティネイのワインのカテドラルでの買い物が、バイス3兄弟の現場に行く時の楽しみの一つになっている。
| U1 | ワインのカテドラル | 16:47 | comments(0) | trackbacks(0) | -
マルティネイのワインのカテドラル 1 Nulles


ガウディの生まれたこのタラゴナのあたりはおいしいワインの取れる所で知られている。この週末行ってきたが、既にブドウの収穫は終わっていた。ブリーダーのブドウ畑は、シャンペンと同じ製法で作られるカタルーニャの発泡性ワイン『カバ』用のブドウでシャドルネ種の白ぶどうである。今や世界的ブランドの『フレシネ』がこのブドウを買い求めているという。、今年のスペインの夏は雨が多く、気温が低かったせいか幾分甘みに欠け水っぽいような気がする。彼の弟子たちのジュジョールもマルティネイも同郷で、ブドウとの関係が密接である。写真のブドウの絵は前回紹介したジュジョールのVistabella教会内部の壁画であるが、デザイン的な図柄ではなく、浮世絵からインスピレーションを受けた印象派の絵のようである。マルティネイは、三兄弟と同じ村バイス出身である。1920年前後にマルティネイは、ワインのカテドラルといわれるコーポラティブを40程設計している。我が町のサン・クガットにあるコーポラティブに関しては、以前私のホームページに書いた。(www.u1architects.com/catranarchitects/martinell/index.html)
この写真はその中の一つ、Nullesのコーポラティブである。今回はじめて行くことが出来た。ファサードは,カテナリー曲線を使い、シンメトリーで,材料は自然石とレンガを積み上げて造ってある。屋根は木組みで、カタランボールトのレンガ造でない。デザインはカタルーニャの民家風で、特に入口部分に、石灰岩を彫刻して曲線の枠としているところがEl Pinell de Braiのものに似ている。
 近くに寄って写真を撮っていると、甘酸っぱいブドウの発酵している有機的な匂いがした。マルティネイの設計料はこのワインで支払われていたのであろうか。


| U1 | ワインのカテドラル | 23:21 | comments(0) | trackbacks(0) | -
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