2009.10.24 Saturday
歴史的建造物の保存と再生 1.セサール・マルティネイのワインのカテドラル
この秋晴れの週末、愛犬3匹を連れてタラゴナのマシアCan Collに一泊お泊まりした。 今回は田園ペンションの泊まり心地をチェックする目的もあった。 周囲には民家も道路も人通りもなく、見渡すかぎりブドウ畑の中にポツンと一軒だけ建っている。 築500年は経っていると思われる石積みのカタルーニャの古民家である。 1Mもある石積みの外壁の厚みに守られ、ケータイの電波も届かず虫の音、鳥のさえずりにも邪魔されることなく無音の一夜で、次の日、日の出の時に自然と目が覚めた。 日常の一切のストレスから解き離れ、今までにはなかったような不思議な体験であった。 ホームページでも紹介しているが、マシアCan Collは国や州政府の補助も受けず、『建築への愛情』と『建設への情熱』が予算、数々の条件などの困難をフィードバックしながら、なんとか最初のイメージを維持し続けクリアして行き、最後はクライアントと共にセルフビルドで朽ち果てた廃屋を5年かかって『カタルーニャのお宝』として今の時代に再生した。 この5年の月日は今を生きている私たちからすれば長い時間であるかもしれないが、このマシア建築の500年の歴史から考えたら短い時間である。 歴史に残る建築とは常にこのような見方が必要になってくると思う。 壊して新築(スクラップ&ビルド)すれば時間もかからず安く済むものを、あえて建物の歴史的価値を考え保存しようとする。しかし、最初にその歴史的価値を見出し、どのように残すかという一建築家個人の明確なイメージとそれを最後まで形にするという覚悟なくしては実現化は難しい。 歴史的建造物の保存再生は建築家という職業の問題ではなく、過去から未来へ繋ぐ鍛えられた歴史観に基づくイメージを持っているかどうかにかかっている。 そのイメージを実現化することこそが開発/保存の不毛な二元論を超える『本当(レアル)のルネサンス=再生』であると思う。 マシアCan Coll近くにあるバルバラ・デ・コンカのワインのカテドラル。 この時期やはりなんといってもタラゴナ地方にあるワイナリーめぐりである。 最近改築されたばかりのセサール=マルティネイのバルバラ・デ・コンカのワインのカテドラル。 建物の中に売店を作り、そこからガラス越しに現在でも使用されているワイン醸造所が見学できる。 ここで5リットルのプラスティクに入った赤・白のテーブルワイン用の若いワインとこの地方でとれるアルベキーノ種と呼ばれる小粒のオリーブから搾り出した最上のバージンエキストラオイル5Lを買う。 そして、10年ぶりに改築後のワイン醸造所の中を特別に見せてもらう。 週末この村に住んでいる漫画家のカッファ夫妻とここで待ち合わせる。 彼の展覧会がこの前のバールレストランでやっているというので寄った。 カタランボールトで創られた片持ち梁の階段。 柱頭部分がモデルニスモ風の不思議な曲線のレンガ積みの柱。 |