バルセロナ建築漫遊記・未来へ

バルセロナから未来への気ままな発信です。
アートギャラリーのリフォーム? Piso H en Sant Cugat

この写真は昨年の年賀状の写真に使ったPiso H en Sant Cugat。リフォームした普通のマンションの住居スペースであるが、家具がないので、まるで生活感のないアートギャラリーの様。実は、この曲面木壁の中には、3つのドアーが隠れているのである!

これは、最初のイメージパースでバーチャル空間。色、素材は変わったが、何とかこの空間のイメージは実現できた。



そして、これは現在住んでいる状態の写真。

今まで住んでいた家(エリアス・トーレスの相棒のホセ・アントニオ・マルティネス設計)は、プール付きで延べ床面積400mある豪邸であったが、子供たちも大きくなりそれぞれ独立したので、それを売り払い、サンクガットの駅近くの閑静な低層集合住宅地区に中古物件を買ったのである。そして、老後は夫婦仲良く近くのゴルフ場でゴルフをしながら、のんびり快適に過ごそうという計画で、その設計を任された。
一辺が20mの直角2等辺三角形のプランとなる使い勝手の悪い間取りのマンションであったので、柱だけを残し、レンガの間仕切り壁を全部取り払うとの全面リフォームの仕事であった。図面がないので、実測し平面図を起こすところから始めた。前の家に比べたら半分の約200mの床面積であるが、そこに3部屋にそれぞれの浴室、書斎、大サロン、キッチンを三角形プランに美しく収めるかが重要なテーマであった。同時に前の住宅に住んでいた時と同じような住環境機能を保つことが条件であった。(特に上階、隣の音の遮音には、気を使い天井をゴムの入った消音構造の吊り金具を使った。サッシは防犯、防音をを考え、6mmと10mmの合わせガラスとする等など)最終的には3つの部屋と2つの浴室は、卵の殻で包むというアイデアが出てきて、サロン、キッチンなどのサービス空間と分け、3つのドアーはイメージパースのような曲面壁に埋め込まれたものになった。このクライアントは、要求も高いので、リホームというよりは、住空間の質の高いリニューアルと言う方が近いかもしれない。
下の3枚の写真は現在の夫婦が生活していいる状態。家具も入り、より彼らの快適でレアル(real)な空間となっている。奥さんからもこの空間を大変気に入られている。この家具類は、知り合いのインテリアデザイナーから安く買ったイタリア製高級家具であるという。建築家として、空間を第一に考えるとこの家具類は邪魔しているだけであるが、クライアントの生活空間の趣味と家具のお買い得感までは強要できない。建築写真としての作品性は薄れてくるのであるがこれも現実の姿である。もし、最初の写真に、イタリアの家具メーカーカッシーナ社のマッキントッシュのハイバック椅子を壁面に沿って一つ置けば、伊東さんのデビュー作とも言える今は無き、U houseに近い写真が撮れたかもしれない。
建築のデザイン性の高い雑誌では、最初のアートギャラリー風の写真が好まれ使われるのであるが、一般読者の感覚からすると、美しいだけでなく自分が住みやすいと思うものが重要視される。
部数を伸ばすのはこの手の家具カタログの写真のような空間デザイン性の薄まったもので、いわゆるデザインの質の高い建築雑誌は、ますます世界リアルタイムのネットクローバル化の中で廃刊に追い込まれていく傾向にあるようだ。
しかし、この傾向も表面的で浅いものなので長くは続くかず、これからは、その背後にある建築的で本質的な所への興味へも移って行くのではないかと思う。それが、低迷する今日の建築デザインで自分が目指すべき方向でないかと考える。

| U1 | リフォーム | 18:42 | comments(0) | trackbacks(0) | -
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