バルセロナ建築漫遊記・未来へ

バルセロナから未来への気ままな発信です。
日本のガウディ (2)
ガウディ建築の最初の日本への紹介者が、今井兼次であることを以前私のブログで紹介した。
http://blog.u1architects.com/?eid=231902

そして、ガウディの最初の研究論文を発表したのが、1959年、建築学会関東支部25回で、61年までに続けて4報の研究論文を弟子の池原義郎と共に発表し、翌年62年には長崎26聖人殉教記念館が完成している。今井の建築が単にガウディのコピーでなく、遺伝子レベルまで深く分析し、それを彼自身の方法で見事に解釈し、インタープレットしたものであることを述べた。
この日生劇場も定礎は62年で、村野藤吾設計により63年9月に竣工している。この時期、今井兼次のガウディ研究により、日本の建築、芸術界で最初のガウディブームがあったことがわかる。今井のダイレクトで遺伝子レベルの深いガウディ解釈に対して、村野のガウディ解釈は、あくまでも近代建築デザインレベル内での高度な建築装飾的導入である。外観ファサードは、20cm厚の分厚いむくの花崗岩を用い、鉄骨鉄筋コンクリート造でありながら、張り物ではない石積み風な重厚な仕上げで、クラッシックを踏襲した表現派的なファサードである。建設当時、まだフランク・ロイド・ライトのマヤ風装飾の石積みの帝国ホテルが隣に建っていたのを意識したものだったという。ライトのデザインした、いわゆる有機的建築との調和を考えて村野解釈に基づく有機的建築風にデザインされたのだ。特に角の柱のディテールは、ガウディのカサ・ミラをイメージしたものに思われる。この柱に現れたものが、あの劇場内の有機的建築の雄、ガウディのモザイク曲線に繋がることを暗示しているかのようである。
ガウディの建築デザインを、近代・現代建築デザインに昇華している村野建築は日本の宝であると思う。



| U1 | 村野藤吾 | 21:26 | comments(0) | trackbacks(0) | -
日本のガウディ(1)
今回の一時帰国では、村野藤吾の傑作『日生劇場』の内部を見学できたのが最大の成果であった。
2年前に私がオルガナイズしたバルセロナのラサール大学建築学部での日本建築展では、劇場内のガウディ風のうねった壁面と天井の写真で『日本のガウディ』としてバルセロナで知られるようになった。今まで、表現主義的な御影石の重厚なファサードのビルという程度の認識しかなかったが、この建築展をきっかけに、ぜひ劇場内を見たいと思っていたのである。
建築素材にこだわり、壁、柱、天井、階段にそれぞれ生かし、ここまで建築をデザインした建物を見たのは久しぶりで、自分の体が打ち震えてくるのが分かった。「さすが、村野さん。すごい!」
建築芸術まで高められた傑作で、『日生劇場』が近代建築の世界遺産であることは間違いない。
 
ガウディのサグラダ・ファミリアを思わせる天井。

壁面は、全面、1cmX5cmの細かい色ガラスモザイクピースで出来ている。18金箔を貼ったものもあり、照明を当てると光る。

真珠貝の貝殻を張ったうねった天井面。村野は本当はこの天井全面に真珠を埋め込みたかったらしい。
| U1 | 村野藤吾 | 15:38 | comments(0) | trackbacks(0) | -
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