バルセロナ建築漫遊記・未来へ

バルセロナから未来への気ままな発信です。
可動ルーバー=ジャルジー窓のダブルスキンはイギリス正統温室建築の名残
先回のプログでは2つの砲弾型の建築、ロンドンCityにあるフォスターのSwiss ReとバルセロナにあるヌーベルのTorre Agbar紹介し,その好みまで聞いてしまったが、私としてはパワフルセクシーの感じのするヌーベルの建築が好みである。

遠目は同じ形の砲弾型なのに建築的には全く異質なものである。
フォスターのは鉄骨構造でハイテック・メカニックな閉鎖系カーテンウォールに対して、ヌーベルのは構造は現場打ちの鉄筋コンクリートで、その外側を可動ルーバー=ジャルジー窓の開放系ダブルスキンで覆われている。

この建築デザインの違いがヌーベルのパワフルセクシーに由来しているのではと考えた。
メカニックな機械=人工ロケットに対して自然と共生する有機体=建築ほどのコンセプトの違いが両者の間にはある。

150年前の水晶宮のハイテック進化系建築(active)がフォスターで、伝統的な建築芸術を踏まえたラスキンのゴシックリバイバル(ガウディを含めた)進化系建築(passive)がヌーベルの系統があるように思える。





ロンドン、CityにあるフォスターのSwiss Re

正三角形のカーテンウォールで覆われた閉鎖系ダブルスキン。
三角形の鉄骨構造に白いカバーし、ハイテックに過剰すぎるほどのデテールがされている。





外側はロウテックな手動可動ルーバー=ジャルジー窓で覆われた開放系ダブルスキン。
LEDの照明が無造作に付いている。
カラー波型アルミパネルの内側は50cm厚の分厚い現場打ち鉄筋コンクリート。



これは先々回紹介したスターリングのレスター大学

構造は打ち放しのコンクリート。50年ほど経っているが、安藤忠雄のように化粧打ち放しコンクリートにはない、力強いコンクリートの素材感がある。外壁は赤レンガ積みで、窓は水平にアルミサッシで平行に切ってあり、レンが壁の持つ重量感を軽減している。このアルミサッシ窓はよく見るとダブルスキンで、下側には可動ルーバー=ジャルジー窓で室内外の気温をコントロールしている。温室がルーツのモダン建築の名残のようである。



この建築は今回のイギリス旅行で一番会いたかったスターリングの傑作ケンブリッジ大学歴史学部の建物。レスター大学の直後1964~7年に建てられた。
ケンブリッジでは中心部に車を停めることができず、街を10回ほどグルグル回った末にようやくたどり着く事ができた。













温室で暖められた空気をこの可動ルーバー=ジャルジー窓で外に逃がすようになっている。
ガラスのダブルスキン+可動ルーバー窓+ブラインドを建築デザイン的に取り入れた温室パッシブソーラーシステムのエコ建築である。
外部のガラスの汚れを掃除する為のアルミ製の梯子も建築化している。
赤レンガ積の壁と透明ガラスのアルミカーテンウォールの材質のコントラストで見事にデザインされ、それがますますこの建築に透明感を与えている。

レスターとケンブリッジこの二つのスターリングの大学の建築は、イギリス正統のポストモダン建築、仕上げは貼りものでない切石積みの本物(real)のシュトゥットガルトの『国立美術館』へと繋がって行く。

| U1 | イギリスモダン建築 | 15:33 | comments(0) | trackbacks(0) | -
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