バルセロナ建築漫遊記

バルセロナからの気ままな発信です。
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日本庭園建築の美−シッチェスのグランカスカダ−
 

もうそろそろ植栽が落ち着いてきて、いい写真が撮れるのではと思い昨日グランカスカダへ行ってきた。その時の写真。

一年も経つと、滝面に緑が少し付いてきて苔も生え石も古びた感じになってきて、人工的なものなのに自然に思えるのが不思議である。

本当に素晴らしい空間の中にいると幸せな気持ちになる。



メインアクセス、玄関部分。この階段部分は円周の直径の部分に当り、左は半円形、右はそれを一辺とする正三角形のプランとなっている。この直径軸が岩盤に当る所から、円周上のそこを起点としてグランカスカダは始まり、正三角形の重心から伸びる東西軸で終わる。円柱のある木デッキステップと階段は片持梁、水面上にある。玄関入口部の4分の1円の水場は奥のグランカスカダに繋がり導入部となっている。



半円形のサロン図書室から、メインアクセス、玄関部を望む。MBMの原設計では、この半円スペースは駐車場になっていたが、カーサ4に駐車スペースを持っていく事によりゴルフ場のグリーン、地中海のブルーの絶景を望むサロン図書室に変更となった。



サロン図書室から石庭を望む。奥の壁が半円形のサロン図書室のガラスを映していて現実にはない風景を創り出している。
鶴亀庭園をこのモダンな空間にレインタープレットしたものである。「ここに花がほしい」と言うクライアント夫人の要望を受け、手前は亀をイメージし薄くて丸い黒い石をモルタルで積み上げ植木鉢とし人の手で創ったもの。奥の石組みは鶴をイメージし、自然石を見立てたもの。



2階渡り廊下から見た三角ロビーエントランス部分の石庭。
実際は『大ガラス』のアルミサッシで内/外を分けているが、外部グランカスカダと内部の石庭がイメージの世界では仕切られることなく繋がっているようにデザインした。そうしたら予期せぬことにガラスに反射して瓢箪の形をした石庭が現れた。

まるで自分のイメージが天に通じたような不思議な出来事であった。
建築の設計においていかにコンセプトが重要であるかを今更ながら実感する。


水/石、白/黒、滝/海、鶴/亀、円/正三角形/正方形、人工/自然、花/草、天/地、鯉/龍、幾何学/自由曲線、正三角形の重心から伸びる東西軸線、陰/陽等々様々なイコンがこの庭にちりばめられている魔法の庭園である。この魔方陣が結界を作り、地上界とは隔絶した別世界を創り出しているかのようである。



この世のものとは思えない美しい空間である。




現実では外と内を分けているガラスのスクリーン。しかし、別の次元で繋がっている。




透明ガラスのデッキから見下ろした滝壺。鯉石を目指して落ちて行く滝。モヤイ像にも見えてくるから不思議だ。エクアドルの石工職人がアナコンダだと言っていたのも頷ける。
私のイメージとしては、鯉が龍となり天に昇って行くところ=龍門曝をレインタープレット(Re-interpreto)した。



ガラスのデッキ越しに滝の上部にある東屋カーサ5を望む。



東屋カーサ5の床下を流れ、東西軸線上の川に流れ込むせせらぎ。
毎年行っているピレネーの渓谷をイメージして石を組み上げた。
自然な良い風景として馴染んできている。



東屋内から見たせせらぎとテラスデッキ。クライアントの奥さんと話し今度はここで茶会をしましょうということになった。











東西軸の川。向こうに御影石の橋。秋分、春分の日にはこの川の向こうに夕日が沈む。
irokoの木の15メートルの電動可動壁扉。
扉を開けるとその向こうに広がる松林の森が借景となる。

立体式回遊庭園と呼べるようないろいろな地点からの風景を楽しめる。
このグランカスカダが主でその周りに配置した建物は従という関係が生まれ、滝空間の中に建築が点景としてあるという季節、時間の流れを感じさせる日本庭園特有の空間に仕上がったと思う。

これは2次元のレイヤーを重ねていけばできるようなものではない。やはり3次元としてモノとして力強く建ち上げるには、いろいろなポイントからフィードバックを繰り返しながら時間をかけて創り上げていくという、建築学的な本来の手法が有効であるように思われる。

クライアント=パトロン=ライバルとの10年近くにも及ぶ真剣勝負の協働作業がなかったらここまでくることはできなかったであろう。

このシッチェスのグランカスカダはエコ建築のプロトタイプとでも呼べる日本庭園建築をスペインにレインタープレットできたと思う。
エネルギー効率だけを考えたエコと言う考え方は建築の世界ではあくまでもベースに過ぎないのである。


この30日にバルセロナのユネスコの講演会では『日本庭園建築の美について』をテーマとした話をすることになっているが、安土桃山時代の国宝、如庵=ジョアンの茶室とスペインルネッサンスとの関係からこのシッチェスのグランカスカダの庭園についての説明をする予定である。

450年前に既にお互いの文化を共有していたので、スペイン人の人たちにもこの日本空間の美を解ってもらえることと思う。


| u1arc | グランカスカダ | 09:24 | comments(0) | - | -









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