バルセロナ建築漫遊記

バルセロナからの気ままな発信です。
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サルバドール・タラゴ(Salvador Tarrago) 『歴史的建造物再生』最終講義
昨日は6月25日はガウディの誕生日。

毎年この日にサルバドール・タラゴのマスターコース『歴史的建造物の分析とその再生(FAIPAC)』の打ち上げをすることになっているが、UPC(カタルーニャ工科大学)を退官するので昨日は25年間の卒業生も招待され、最終講義となった。



このコースは25年前に始まったが、私はその2回生として86年から91年までお世話になった。
当初はスペイン語の授業に付いていくのも大変であったが、それまで日本で学んできた建築史でその想いを分かってもらえ、いろいろな国から来ている建築学生の友人がたくさんできた。
今でもサルバドールとその付き合いは続いている。

特にヴィオレ・ル・デュクの建築理論を研究していたので、ガウディの建築思想や修復の理論を理解する上で大いに役に立った。また、サルバドールとは言葉以上に図面でのやり取りで自分の考え方を分かってもらうことができ、充実した留学生活を送ることができた。

そして92年には日本人で初めてそのマスターコースのタイトルを得ることができたのである。


中央、サルバドール・タラゴ先生


中世歴史都市Besaluのサーベイ 広場を中心に建築と街が融合し一体化している



学生のプレゼ

最終講義では、『私の先生達』というテーマでこれまでの建築学究生活を振り返られた。
大学(カタルーニャ工科大学=UPCのバルセロナ高等建築学校=ETSAB)を卒業する時に教授で当時GRUP Rの建築家メンバー(ボイガス、モラガス等バルセロナスクールとも呼ばれていた)としても活躍していたM.S.Sostres先生から誘いを受け、助手として研究室に入り建築人生をスタートした。
そこでは、コルビュジェ等の近代建築理論と設計を学び建築家を目指していたが、『建築を計画、デザインする時に一番重要なのは歴史だ!』ということに気付いた。

1969年ポルトガルで行われた建築会議で当時、カサベラ誌の編集長であったアルド・ロッシと知り合い、彼のヨーロッパの古い都市の建築について書かれた研究書『L'Architectura della citta(都市の建築)』に感銘しそのスペイン語翻訳を手がける。

常に建築家の独りよがりのフォルマリズムに陥らないように、歴史都市との関係で建築デザインを考えていくことを心がけて今までやってきたと切々と語った。

ヨーロッパの歴史都市を再生させる為には、地理的、地勢学的,考古学的、民俗学的な観点から
その都市がギリシャ、ローマ時代から中世、近代の各エポックを経て現在まできた発展の歴史をまず理解することから始める。

特に地理学と歴史学の関係は重要で、フランスの建築家、ブロンデル、ヴィオレ・ル・デュク、ショワジー、スペインではプッチ・カダファルクの修復建築家、建築理論家が彼の重要な先生となった。

そして最初にバルセロナの近代都市計画家のセルダの研究をし、また偉大な修復建築家デュクの理論がガウディなどアールヌーボーの建築家とコルビュジェ等近代建築家に与えた計り知れない影響を理解することができたと語っている。

『保存がモダンを生んだのである。』(土居義岳)
と同じ考え方である。

いかに建築学的に修復と再解釈+創造=interpretacionをするかということである。
言葉で言うのは簡単なことであるが、実際に実行するのはとても難しいことである。

例えば、中世から近代までの各エポックで1千年の増改築を繰り返してきた建造物を現代にどう再生させるか?
デュクの場合、カルカソンヌ城、パリのノートルダム寺院を、デカルトの方法の理論を建築考古学に導入し、徹底的に分析し、彼の合理的方法で深い所から評価+再解釈+創造したが、考古学者、文豪のビクトル・ユーゴからは建築家は歴史の破壊者として激しい批判を浴びている。

しかし、この方法での建築家による修復はモニュメントである建築は長い歴史の中で形成されてきたフォルムであるので、そのような批判に耐えるものであるという考え方である。

これこそ『建築』は芸術の中でも上位に位置する芸術なので建築家=arquitectoは心してこのヨーロッパの伝統を継承しなければならないということであるが、このグローバル化し不況真最中の現在、いかにこの伝統のある職能を維持していくか難しい所に来ていると思う。

しかし、歴史こそ都市と建築にとって最も重要なものであるので第一に考えていかなければならないという結論に達したと。



24年前、都市計画家セルダの生家でコースの仲間と撮った写真



昨日の最終講義終了後のパーティで撮った同じ仲間との24年後の写真

少し年は取っているが、どういうわけか同じ位置で写真に納まっている。2回生はこの4人だけが来た。
当時の建築にかける熱い情熱は24年経った現在でも変っていないことを確認できた。


最終講義後のパーティに集まったマスターコースの仲間達

サルバドール自身、学生からも教えられることが多かったと振り返っている。

歴史の中でのヨーロッパの正統の『建築』を教えてもらえ、皆サルバドール・タラゴ先生を尊敬している。


セルダの写真が掲げてあるETSECCPBのエントランス






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