コルビュジェ特製、腕を上げた人体と黄金比=0.618で9分割した身長の赤系列との腕を上げた時の青系列の尺度を表現したもので、特別にステンドグラスにしてデザインしたものである。
腕を上げた人間の高さを226cmを基準とした正方形の透明ガラス窓に、一辺が53.4cmの正方形の『モデゥロール(黄金尺)』のイコンが嵌め込んである。
まるで聖櫃の如く据えられたモデュロールの礎石(183x86x86)
最初の計画ではガラス窓の原点の前に据えられる事になっていたが、現在の右側になった。
この8mx13mのコンクリート壁に、モデュロールのコンセプトがデザインされている。
エレベーター塔の中心軸に『住居単位(L'Unite D'Habitation)』の原点として、コルビュジェがこの位置に決めた。エレベーター塔の梁を外壁まで突き出し、その中心線の垂直線と人間の基準寸法を183cmとした水平線の交点を原点としている。
もう一つ重要な寸法はへその高さで183cmを黄金比=0.618をかけて導き出された113cmとなる。
手を上げた人の高さは226cmは臍の高さ=113cmの2倍となる。
つまりこのガラス窓は臍の高さの正方形113x113を4枚使ってできたものである。
まるで中学校の幾何学と数学の問題を解いているみたいな建物のデザイン。
これが幾何学と代数学に基づいている西欧の建築=アーキテクチャーの原理なのであった。
ルネサンスの万能人といわれる建築家のほとんどは数学者であったのはこのことから来ている。
この数学的尺度が美しいプロポーションを生み出し、統一と調和の取れた空間を生み出すという考え方である。
特にパルテノン神殿に代表されるギリシア建築は厳密な幾何学・数学的体系によって導き出されているので、コルビュジェはそのアクロポリスの神殿廃墟を見て『機械のように美しい建築』と感動したと建築家になる前の東方旅行(1907)に書き綴っている。
それから40年の時を経て『モデュロール』としてコルビュジェの『モダン建築の設計方法論』として確立したのである。
『モデュロール』の正式のタイトルは『建築及び機械のすべてに利用し得る調和した尺度についての小論』となっていて、ギリシア・ローマ=>ロマネスク・ゴシック=>ルネサンスと歴史的建築を深い所から分析し、機械の時代の近代にも合うように『レ・インタープレット(Re-interpretacion)』したものだったのである。
コルビュジェはこのマルセイユの『住居単位』の事を『これは中世から今日へ掛けられた橋である。』と書いている。
しかし、その建設に1946年から52年まで6年の年月がかかり、彼の考えた『モデュロールの建築理論』でこの建築を実現化するのはまるで戦争のようであったという。その道を阻んだのが、以外にもコルビュジェの新しい理論を理解しようとしない同業の建築家とその組織者であった。
今では偉大な建築家と奉られているコルビュジェも、当時は建築家を職業とする大多数を敵にまわし独り頑張ったようである。
日本で考えられている『モダニズム建築』のイメージ=コンクリートの四角い箱とは程遠いものなのである。
それだけのコルビュジェのパワーをもってできた『マルセイユの住居単位』は、近代化社会においてユニテ=統一と調和をフランス国歌(ラ・マルセイエーズ)の如く謳い上げている偉大な建築詩=歴史的建造物であると思う。
やはりガウディとコルビュジェの建築パワー=建築を建ち上げる意志はズバ抜けている。