バルセロナ建築漫遊記

バルセロナからの気ままな発信です。
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建築史と建築論との間
今日は聖金曜日。キリスト磔刑の復活祭の重要な日だ。

キリストはこの日に一度死んで、3日後の日曜日に復活したという聖書の記述に基づいた祭礼を行うようになったという。このキリストの復活は栄光の第一の秘蹟=ミラクルとしてカトリックの最も重要なミサとなっている。

その日どりは、325年の第1ニカイア公会議で「春分の後の最初の満月に次ぐ日曜日」と決定され、昨年は4月4日だったのが、今年は20日遅くなった。
この時期、スペインではセマナサンタといってヨーロッパ中が春の観光シーズンとなるが、こんなに遅いイースターは初めてのような気がする。

春の訪れと共に、『復活』を望む人々の意志と祈りがその歴史を創ってきたように思う。
この『復活』によって人間本来の尊厳を取り戻すのだ。


日本から建築史学会の大会記念シンポジウム「稲垣史学の地平」というお知らせが届いた。
震災直後なのでその開催が危ぶまれていたが、大会運営委員の努力により予定通り明日行うことになった。ご苦労さまでした。(今回は残念ながら行けませんが、その様子をYoutubeにアップしてもらえるとうれしいです。)

稲垣栄三が亡くなって今年で10年となり、建築史学会の創設者でその学業功績を讃えると共に、現在の建築史学を再確認し発展させる為の「稲垣史学とは何か」という討論も行われる。

ここに『建築史と建築論との間』という手書きのメモがある。
31年前、建築史を本気で研究していた頃に書き写した稲垣の「建築雑誌 1980年 8月号」の文章である。
そこには、
「1.・・・日本における西洋理解と日本固有の伝統の継承という二つの課題がそれぞれの研究領域の出発点であり、両者併存する状況はこの100年間本質的には変っていない。・・・2.建築を総体として論じようとする知的関心の源泉はヨーロッパの建築的伝統の中にある。建築論(theory of architecture)という知的領域はヨーロッパの建築的発展と表裏一体であって、建築の全体性や普遍性に関する概念は、もっぱらヨーロッパにおいて育成されたものといえるであろう。全体性と普遍性は文化の包括的表現として、また人間の求める究極的な真と美の表現として獲得されたものであって、知的探求が建築によって触発されると同時にその考察が建築の発展に反映する。
とある。

当時、この言葉に多いに刺激を受け、自分を奮い立たせて『建築=architecture』への知の深〜い果てしない森の中へ、一人の冒険者として突き進んで行ったように思う。

このシンポジウムには、鈴木博之X藤森照信のバトルトークが予定されている。
鈴木博之氏は「建築史学 22号 1994年3月」号の書評欄で藤森の労作『日本の近代建築』をこう批評している。

−博物学的ともいうべき技術的分類によって数多くの「派」を立ててゆく本書の後半の叙述には、多少の楽観的単純化が見られるように思われるのだが
と藤森の通史的叙述に疑問を投げかけている。

また、
−「様式」「形式」「用途」の説明は混乱している
と建築の重要な諸概念の曖昧さを指摘されている。

つまり、概念装置がいい加減なものだから建築学術論文とは言いがたいと言われたようなものである。

しかし、藤森は80年代以降、アカデミズムの狭い世界から赤瀬川原平、南伸坊らと共に建築探偵、路上観察しながら、建築を一般にも文化として受け入れられる基盤を作ったと言える。

稲垣が続いて言っているように「一言で言えば普遍化しうる美的構造の不在」ということでなのであるが、私は藤森は日本建築特有の「法則性の欠如、象徴性や情緒性の優位など、固有の性格」を承知で開き直って肯定し、博物学的に日本建築のレッテル貼りに勤しんで行ったように思える。

レッテル貼りで終わらせずに、その先に見えてくる思想的な所まで知りたかったのではあるが・・・

鈴木博之、藤森照信両氏には
「この状況下での日本建築史の貢献は、日本の伝統的建築をどのようにして、普遍性のなかの独自性として位置づけるということではないであろうか。」
という師、稲垣が30年以上前にすでに望んでいた、今後の建築史学の展望を期待したい。

そして新しい稲垣史学の『復活』を望む。




| u1arc | 建築史 | 00:41 | comments(0) | trackbacks(0) | -









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