バルセロナ建築漫遊記

バルセロナからの気ままな発信です。
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バイス三兄弟セルフビルドプロジェクト 30           『生きる』喜び=『建築できる』喜び
バイス三兄弟セルフビルドは今年で6年目を迎えた。
今回でちょうど30回目のプログで、このブログ『バルセロナ漫遊記』の歴史にもなっている。

昨年中の完成を目指していたが、2週間ほど前にジョセップから連絡があり、夏休み前には終わりそうだから見にきてくれと連絡があった。

そして先週の水曜日、18日に現場に行った。
先回のバイス三兄弟のプログは昨年4月18日なので、1年1ヶ月ぶりの現場である。私も実はこの1年間体調を崩し手術のために病院の入退院を繰り返していたので、久しぶりのまぶしい建築現場であった。

長男のジョルディと次男のジョセップが迎えてくれた。
「一ヶ月前に3度目の手術を行い、それが5時間を超える大手術でたいへんでね、何とか生き残ってここに戻ってこれたよ。今は運転もできるし、松葉杖無しでちゃんと歩けるだろ。ほら、この様にね。」という感じで、近況を説明する。
「自分達もこの大不況の中、ようやく重機の仕事を見つけ一息つき、そしてまたここを続けることことができて、もうすぐ終わらせることができそう。プールよくできただろう。とにかく今は弟のジョセップと二人でやっているので、やることが多くて。」
と、やっと工事の終わりが見えてきたとジョルディが嬉しそうに話す。

お互いにこのセルフビルドプロジェクトで『生きる』喜び、『建築できる』喜びを共有できた。

よって、我々にとって『生きる』=『建築できる』なのである。
現在では忘れられている建築本来の姿がそこにはある。

 
SPA付のプールが完成していた。
全て兄弟の手作りだ。不成形のプールを丁寧に愛情を持って、今の職人以上の仕事をしている。
テラスとプールの間は芝生を植える予定なので、建物+芝生のグリーン+プール+松林で一体化した素晴らしい空間になるだろう。


フラットルーフに付けられた3つのガーゴイル(樋の吐水口)の真下には円形の排水口があり、ここには大理石の丸石を敷き詰め庭を少しデザインする。ここに落ちた雨水はフィルターを通して浄化され、プール横の貯水槽に行くエコシステムになっている。


門扉を入った所には枕木で植え込みを作る。ここにはあまり手のかからなく丈夫で安価な竹を植えようということになった。竹を植えることによって、和風の露地空間を楽しめる。


天窓にはガラスが入り、真下には泉のある坪庭を創る。7mスパンのなだらかな曲面ボールトで、それを大きな緑の玄晶石の石板壁によって、しっかり支えている。この石板壁がアクセントになり空間に緊張感を与えている。天井高は5mあり、広々とすっきりとした『明るい部屋』になっている。昼の長いスペインの今の時期、電気無しで10時までこの部屋で作業ができる。またエアコンの送風口が二つ付いているが、30cmの厚い断熱レンガ壁なので涼しく、松林からの心地良い風が通り、冷房なしでシエスタにとてもよく快適だとジョルディが言っていた。

パッシプエコ建築になっていて本当の省エネ建築であることが実証された。
パッシブエコとは、敷地の自然・環境の持つエネルギー効率を第一に考えた機械設備機器に頼らない建築的解決方法のことである。
それが基にあって、機械設備機器のアクティブエコを考えていけば最大限のエコ建築をつくることができるのである。例えば、この南面の7x14mのボールト大屋根に太陽光パネルを貼り付ければ効果的というように、これからはエコ建築作りが重要となってくるだろう。
乾燥した熱い太陽の照りつける長い夏のあるスペインでは特に有効である。


新しい門扉ができていた。
十字形に鉄板を切り取り、中心は円形になっている。
ジョセップが考えてこの様にデザインし自分で創ったらしい。
セルフビルドの現場から出てきた単純で合理的なデザインである。
この地の十字軍テンプル騎士団に無意識に由来しているのかもしれない。

この鉄板を切り取った所にくもりガラスを嵌め込むようにしたいのだが、色をまだ決めていないので考えてほしいと言われたので、背景の建築はかなり抑えられた色なので少し派手目の色、例えばワインレッドがいいのではと答える。玄関扉は地中海に浮かぶ月とすると、右の車庫の大扉は太陽かな。そうすると、左は月の円で黄色の色ガラス。右は太陽の円で赤の色ガラスというようにとデザインのイメージが膨らんできた。

セルフビルドの現場から生れ出たデザインを発展させるのは真の建築デザインであるということを、石山さんの所でやった松葉邸セルフビルドプロジェクトで28年前に学んだ。
いわゆる今流行している何々風スタイル、デザインの為のデザインなどは、少し時間が経てば古臭く感じてしまう。

長男のジョルディは、この建物建て初めて6年経っているけれども古く感じない。かえって後で建った隣の建物の方が古く感じると言う。

それはオリジナルデザインを、さらにセルフビルドで建築に愛情を持って、時間をかけて丁寧に創ってきているという建設方式にもよっていることなのであると考える。

あと2ヶ月で完成するのはうれしいけど、この6年かかったセルフビルドが終わってしまうという寂しさがある。

アーキテクトとビルダー+施主が『建築する』プロセスを楽しむ、スローで濃密な時間であった。6年というこの建築する時間はけっして長い時間だったとは思わない。

このアーキテクトビルダによるセルフビルド建築方式を使った復興・街づくりの新しい手法として取り入れ、『おらが街』を時間をかけてそのプロセスを楽しみながら、日本全体で協力し合い創って行けたら日本の素晴らしい未来があるのではと思う。
是非、石山さんには頑張ってほしい。

次はお披露目でプールサイドでパーティをするので海水パンツ持参で集まろうということになり、その後はバルセロナの日本食レストランで御馳走してくれるとの約束をした。

『生きる』喜びと『建築できる』喜びを与えてくれた、この大地に根付く『野太い建築』が完成するのが楽しみである。
| u1arc | バイスの三兄弟セルフビルトプロジェクト  | 16:20 | comments(0) | trackbacks(0) | -









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