バルセロナ建築漫遊記

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カタルーニャロマネスク 『エヴァンゲリオ(四福音書)』「良い知らせ」





今年のバルセロナの夏は涼しい。今日の朝の気温は14度で半袖では寒いぐらいだ。毎朝近くの森へダルメシアン3匹と散歩に行くが、犬たちも涼しいので元気一杯に森を駆け抜けている。毎年この時期ピレネーの山まで避暑に行っているが今年は必要なさそうである。
 毎年ピレネーへ行くとロマネスク教会を訪ね歩いているのであるが、本物の壁画は剥がされカタルーニャ美術館に展示されている。
(先週行った時の写真。カタルーニャ美術館からスペイン広場を見下ろし、ティビダボ山のフォスターのテレコムタワーを望む。8月の中旬だと言うのに、バルセロナの街には空には雲が湧き、もう秋の気配である。)
そのロマネスク美術コレクションでは、世界屈指と言われている。その中でも有名なのが、世界遺産にも登録されているボイ渓谷にあるタウイのサンクレメンテ教会のフレスコ壁画である。急にそれが見たくなり、先週久しぶりに見てきた。2番目の写真はその時のもの。教会内部、アプシス(後陣)部分の半球ボールトが再現されていて、オリジナルの壁画が展示されている。その真中に描かれたキリストは何かユーモラスで素朴で人間味がある。カタルーニャロマネスクは、11世紀の始めに東ローマ帝国のビザンチン文化が、地中海交易を通じ、南仏(当時のアラゴン=バルセロナ伯爵領)にもたらされたものと考えられている。それ故にギリシア正教のイコンの宗教画の影響が濃い。今回気になったのが、そこに描かれている翼を持ったライオンと同じく翼を持った牛の絵である。翼を持った人間であれば天使と見過ごしてしまうのであるが、ライオンと牛に翼は変である。このタウイの壁画ではキリストの足元に4つの翼を持った人と動物たちが描かれている。それらは、どうもエヴァンゲリオ(四福音書)のイコンとして描かれたらしい。左からライオンに翼がマルコ、人に翼がマタイとヨハネ、牛に翼がルカと思われる。ヨハネは鷲のイコンで描かれることもある。これらのエヴァンゲリオも東ローマ帝国のあったコンスタンティノポリスで新約聖書という形で編纂され、西側にキリスト教会の教えとして広まったらしい。マタイ、マルコ、ルカは共観福音書といって、ヨハネ以前に作られていることもわかっている。そしてヨハネの福音書だけがキリストを神の子として書いていて、キリスト教の権威を高めようとしている意図が見られる。ここで、キリスト教が国教であることが認められたのである。それ以外の宗教は、偽物、異端とされ、これ以降キリスト教が、国と国の戦争の理論的根拠となり、聖戦という形を取りヨーロッパ中世の戦国時代を迎えることになった。
 3,4,5番目の写真はサンテス・クレウスの聖棺である。4番目の写真の床の石版の下には、エジプトの浴槽形石棺に入っているペドロ3世に仕えたロヘール・デ・ラウリア提督が眠っている。(当初、このロヘールがホワイトナイトのサン・ジョルディ伝説の人でないかと思ったが、やはり、いろいろな資料やモンブランクとの関係から考えるとアラブ勢力と戦ってバレンシアで死んだ征服王ハイメ一世がジョルディとではないかと思えるようになってきた。)4面ゴシックの尖頭アーチの石の彫刻で囲われているが、その4隅上部にに翼を持った人、ライオン、牛、鷲の彫刻がある。こららは、エヴァンゲリオのイコンである。中世キリスト教会がいかに4福音書を重要視していたかがわかる。ユダヤ人、アラブ人だけでなくこの聖書に従わないものは、異端とされ磔、火炙りにされ多くの人々が処刑された。
キリスト教の正統、異端論争、闘争の歴史がヨーロッパの歴史を作ってきたということを、エヴァンゲリオを調べていくことで身近に感じられるようになった。エヴァンゲリオをスペイン語でブエナノティシア(buena noticia)というが、日本語では、「良い知らせ」という意味である。
| u1arc | 世界文化遺産 | 06:49 | comments(0) | trackbacks(0) | -









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