サグラダ・ファミリアの建築構造は、100年ほど前ガウディが長年の逆さ吊り実験により創りだしたものである。ゴシック建築様式の構造力学的不合理性をガウディ独自のこの実験で解決しようとしたのである。その結果、全ての柱は真直ぐ立っているものでなく、重力によりチェーンを垂れ下げた時のカーブが自然で合理的な構造となる。それ故にサグラダ・ファミリアの柱は現在みられるような木の枝ぶりを思わせる形となったとさ。
佐々木さんはガウディが逆さ吊り実験で得られたその建築形態に着目し、HPシェル曲面を,その原理である重力とフォルムの合理的関係を理論化し、世界で初めてコンピューターを使って瞬時に作ることに成功した偉大な建築エンジニアである。
その形態デザイン手法は感度解析手法と進化論的構造最適化手法と呼ばれ、生物の進化や自己組織化などの原理を工学的視点からとらえたものである。これにより自由曲面構造と流動体構造が簡単に創ることが出来るようになったという説明が今回サグラダ・ファミリア聖堂内で行われた。
コンピューターを使うことによりどのようなHPシェルの曲面建築構造も可能になったので、最近の国際コンペでは、この手法で伊東さんを始め磯崎、妹島両氏などとのコラボで新しい建築形態の提案をして勝利に導いているらしい。そして、その実現化には建築構造だけでなく、工法に関しても佐々木さんが解決するというなくてはならない存在となっている。
そういえば最近の建築に内容のないスキン(皮膚)とボーン(骨)だけの抜け殻建築が流行って来ているが、建築家はこの佐々木手法に頼りすぎているからなのあろうか?
今日、森の中で見つけてきた美味しいキノコ(写真2.rovellonロベジョン,3.sep,ポルチーニ)の美しいHPシェル状の形態以上のものを人間が創り出せるかは、今後の建築家の技量にかかっていると思う。