バルセロナ建築漫遊記

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バイス3兄弟セルフビルドプロジェクト 23          『カラコレスのように』マイペースであれ!
2か月程3兄弟からの連絡が途絶えていたが、次男のジョセップから久しぶりに連絡があった。

このところの世界的な経済危機のあおりを受け、スペインでも建設に減速感が出てきた。特にガソリンの値上がりは激しく、つい先日にはトラックの大規模なストがあり、スーパーから物がなくなるのではという心配から皆買い出しに走った。私も心配になり、ストがある前日にはガソリンスタンドの長い車の行列にならんだ。ストは2,3日で終ったので市民の生活にひどい影響は出ないで済んだのでまだよかったが、ガソリンの値段は日本円で160円から一挙に250円になってしまった。日本の200円どころの騒ぎではない。

やはりこのところの経済危機のあおりを受け、2ヶ月以上経っている割にはあまり工事は進んでいない。
心配が現実になり、バイス3兄弟の現場は『カラコレス(カタツムリ)のようにスローな』建設工事になっている。



カタツムリは、この地方(レリダ、タラゴナ)有名で、雨が降った後に、野原へ皆で取りに行き、それをニンニク、玉ネギ、オリーブオイルで炒めて、それを楊枝でほじって食べるという野性味のあるカタルーニャの郷土料理である。フランス料理のようにブドウの葉を食べさせ養殖し、ニンニクバターを詰めて焼いたような洒落たものでない。殻は茶色で厚く、その野性的な苦味が食べると病み付きになり、いつも40個ほどホジホジしてしまう。ガウディしかり、この地方には土着的で馴染みのものなのだ。サグラダ・ファミリアの外壁の彫刻にも彫られているぐらいなのである。それで『サグラダ・ファミリアのようだ』と『カラコレスのようだ』という形容詞は、カタルーニャではほぼ同じような意味で使われている。良い意味で理解すれば、それはマイペースで着実にやっているという意味だ。





黒と緑のピサーラを丁寧にいい感じに張り上げてある。素人ながらここまで来ると、そこらにいる職人よりも腕がいい。そのコントラストとINOXの目地調整の2本のメタリックなラインがディテールとして効いている。

2ヶ月ぶりに改めて見て回るとすごくこの建築に愛着を覚える。この建設が始まってから2年の時間が経過している。建設に関しては素人の彼らが、日本人の私のプロジェクトに従い皆で力を合わせ、セルフビルドでここまでやり遂げたのである。それも世界に一つしかない我々のオンリーワンの建築。建築デザインのオリジナリティーに於いてはナンバーワンの自負はある積もりでいる。

スローな建設であるからこそ現在の建築が忘れてしまっている建築本来の姿を見ることが出来るのである。与えられた条件、時間と共に変わっていく条件に誠実に真剣に対応し、フィードバック可能な建設体制で完成するまであきらめずに取り組めば、本当のレアルな建築が建ち上がる確信を得た。

このバイス3兄弟セルフビルドプロジェクトの建築的意味合は大きいと思う。石山修武さんの元で松葉邸のセルフビルドで学んだことの結論を、25年後、ガウディの生れ故郷であるこのタラゴナの土地に見出せたことが出来たことに、その因縁の深さを感じる。『建築教』のお陰であるのだろう。『建築』を諦めないでやってきて良かったと思う瞬間である。

長い間探してきた『自分にとっての本当(レアル)の建築』がこの写真のようにガウディと同郷のスペイン人の手で、オリジンの建築形態が建ち上がって来て、本当に完成が楽しみである。

スローな工事、『まるでカラコレスのように』マイペースであるからこそ、ここまで来れたことに感謝したい。








この大屋根ボールトのほぼ中央に開けられた天窓によって、建物内部はかなり明るい。その効果はまるでカタルーニャ中世ロマネスク教会に見られる天と地を繋ぐシンボリオ(cimborrio)のようだ。

ガウディはサグラダ・ファミリアの中央交差部にケルンの大聖堂を抜き、世界最高170Mのシンボリオを計画した。それは"Yo soy la luz del mundo(私は人類世界の光である。)"とキリストが言った様に、堂内に多くの光を入れようとしたことが、ゴシック建築様式を超えた新しいガウディのデザインとなった要因の一つであると思われる。

同時にこの実践を通し、ガウディのサグラダ・ファミリアの建築思想に付いても少しずつ理解を深めることが出来てきた。

そのうちに時間に余裕が出来たら、まだ謎の多い『ガウディの建築思想』を論文としても纏めてみたいと思う。
| u1arc | バイスの三兄弟セルフビルトプロジェクト  | 10:51 | comments(0) | trackbacks(0) | -









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