バルセロナ建築漫遊記

バルセロナからの気ままな発信です。
『21世紀の落水荘−Falling Water−』 グランカスカダの歴史
昨日初めて大滝の水落のテストをクライアント夫婦と共に行った。そのあまりの凄さに圧倒されて、皆呆然となる。クライアントと共に共有してきた夢が現実になった瞬間である。20世紀の名建築フランク・ロイド・ライトのカウフマン邸通称、落水荘−Falling Water−を21世紀にインタープレット(日本語で現代風に言うとリメイクが近いかな)すべく取り組んできたつもりであるが、確かに『21世紀の落水荘−Falling Water−』と呼べる特別な建築になったと思う。

以前からこのブログでも紹介しているが、『グランカスカダの家』のプロジェクトを始めて既に7年が経っている。最初のブログが
Date: 2005/07/31(日) No.13で、3回にわたって次のように書いている。
バルセロナ近郊の海の別荘地シッチェスのグランカスケードプロジェクトにかかわって4年の月日が過ぎた。私のHPのカバー写真に使っている。滝の高さは10mにもなる。現在第4期工事に入ったところで、このペースだと完成は来年以降になりそうだ。これまでの建設過程は作品集under constructionで見られる。現在配管設備工事は終わり、上部せせらぎ部分の石の設置工事がようやく終わったところだ。一個2トンもある不ぞろいの苔の生えた古い岩を50個近くをジグソーパズルのようにクレーンで設置していった。なるべく自然のせせらぎのように設置していくのは大変であった。図面には起こせないので、出たとこ勝負、現場での激しいバトルとなった。ピレネーの山で見てきたたくさんの滝や、せせらぎが良いお手本となる。

Date: 2005/08/02(火) No.14
滝の部分にしっかりとした足場が組まれた。滝の部分はなるべく彫った荒い感じの岩盤をそのまま使いたいところであるが、ここの地盤は石灰岩質で一部赤土が混ざったもろい所がある。その為に一度高水圧のシャワーで洗い出し、様子を見ることにする。今回、滝の水の落ち方を模型でスタディした結果、二すじの水が向かい合って同じように落ちる「向い落」の作庭法がこの空間に映えそうだという結論に達し、用いることにした。
向って左の滝は3段落ちで10mの落差、右のほうの滝は少し中心に向って斜めに一直線に落ち、落差8mで計画した。完成したらかなり迫力のあるものが出来そうだ。またこの空間が建物と一体化しスペイン、地中海の夏の強い日差しを遮り、暑さをコントロールするエコテック機能を期待している。出来上がるのが楽しみだ。

2001年4月に造ったオリジナル模型。この模型からすべては始まったといっても良い。この模型を初めて紹介したブログ。


Date: 2005/08/03(水) No.15
5年前、私の家の改築とガーデンデザインの仕事を気に入ってくれたクライアントが、友人を紹介してくれた。シッチェスに家を建てたがっているが、今の建築家のデザインが気に入らないので相談に乗って欲しいということであった。案内された場所は、ゴルフ場のすぐ上の丘に広がる地中海を一望できるすばらしい立地の4千峭盖虔譲地であった。プロジェクトはすでにボーイガス率いる世界的にも著名な建築家事務所のMBMですでに実施設計も終わっていた。設計変更するにも恐れ多い大先生である。しかし、図面を見るとあまりにも鋭角な平行四辺形プランで家としてはスタイル先行していてかなり住みにくそうであった。この建物に合ったランドスケープの計画をするということで大滝のプロジェクトを提案したのが、事の始まりであった。(写真は大滝の模型2001年4月作成。)シンメトリー幾何学的なプランを庭と建物が空間的に融合する日本庭園独特の作庭法を取り入れ、平行四辺形の平衡を崩し東西軸に合わし鈍角とした。それにより庭空間の中に建物を入れ込むという日本建築的空間となった。

2001年12月、右の台に置かれた模型を見ながら大滝部分を地面にマーキング。


2003年5月、石灰岩の岩盤に『向い落ち』の二筋の滝の道をつける。崖に赤と青のバルサカラーで塗られた所。右のRCの構造物は、正三角形プランの主屋の重心から東西軸上に計画し、雨水を溜めておく貯水槽と機械室、屋上部分は、東から西へと流れる川の流れとなっている。滝つぼに落ちる2本の滝とせせらぎをくだりこの東西の流れに合流する3本の水の流れで構成されている。この敷地に降った雨をこの貯水槽に溜め込み、それを滝として循環させるというエコシステムを考えたものとなっている。



2008年4月、入り口玄関ホールからの眺め。滝両側には、額縁のごとく10cm厚の黒の自然石(玄昌石)で高く積み上げられた。


そしてこれが玄関ホールからの滝が落ちてくる眺め。
夢が現実のものになった瞬間である!


滝の水量は、それぞれコントローラーで調節できる。綺麗に落ちる時の目盛りを確認し、左の滝が三段に綺麗に落ちるように滝の道を調整することにする。また、その真下には高さ2mの花崗岩の古い石を立て、鯉石とする。古くからの言い伝えによると、鯉は滝を登り竜になるという。正しくキーストーンである。この滝はカーサ1の南西側に位置し、風水上、龍門瀑となっていることからその縁起をかつぎこのようなイメージが湧いてきた。

完成するのにもう一息の所まで来た。滝面にはポケットを掘り、そこに植栽するというアイディアを造園家の薗田さんから助言をいただき、この場所でも大丈夫という植物をクライアント夫人と共に、ガーデンセンターまで選定に行ってきた。また、せせらぎの上に東屋を造るというアイディアがなかなか受けられずに苦労したが、1/30の詳細な模型を創ることで最終的に受け入れられた。カーサ5(casita de mirador)として滝上に乗っかる。

この滝の音を聞きながらのここからの青い地中海の眺めは、喧騒なこの世を忘れさせてくれるに違いない。


| u1arc | グランカスカダ | 18:15 | comments(0) | trackbacks(0) | -
カスカダ ネグラ(黒い滝)のカーサ4
カーサ4に出現した、屋根材に使われる真っ黒のピサーラの石(玄昌石)をカーサ2の境界線上の塀に積み上げて造った3段の階段状のモダンなフォルムの滝である。


昨日は、その黒い滝、カスカダ・ネグラのお試しがあった。
三段の高く積まれたピサーラの石積みの上から壁面に沿って流れ落ちる様は壮観である。しかし、これが住宅の中庭だと思うとインクレイブレ(シンジラレナーイ)!!!と思わずもう笑うしかない。

このカーサ4には、彼のオフィス、子供たちのための遊び場、ライブラリー、映画ルーム、ディスコが入る。
このクライアントの普請道楽とも言えるパッション恐るべし。


| u1arc | グランカスカダ | 21:08 | comments(0) | trackbacks(0) | -
グランカスカダプロジェクト カーサ2
カーサ2の原設計は、スペインを代表する世界の建築家集団MBMであったが、7年前にMBMが降りてしまったので私が引き継ぐことになったのである。


その後、建設が始まってから5年の間に、カッターナイフのようなシャープな鋭角の平行四辺形プランの建築の他に、クライアントの意向で、新に奥に敷地に合わせた不正形の3階建ての建物が増築され、またプールも斜面の角度に合わせ付け足された。建設と同時進行での大規模な設計変更であったので、市役所への確認申請の変更届から始まり、建築構造家、建築設備との何度にも及ぶ打ち合わせ、MBMのデザインを踏まえながら、最初からプロジェクトそのものを見直し、フィードバックを重ねながら、建設の進行と共に、新たな増築のデザインをバージョンアップして行った。
その結果、MBMのデザインとは違ったものになったが、自分としてはMBMのデザインを尊重したデザインになっていると思う。




大変な作業であったが、今思うと、カーサ2は建築再生プロジェクトのようなやりがいのある設計であった。
| u1arc | グランカスカダ | 00:04 | comments(0) | trackbacks(0) | -
グランカスカダプロジェクトのその後
グランカスカダプロジェクトは2001年からから始まった。今年で7年となるが、建設と同時進行の設計変更を繰り返しながら、まだ工事は続いている。

既にクライアントの家族は一番最初にできたカーサ2に引っ越してきて2年目となる。建設現場に住み込みながらの生活である。この7年の間に、男の子が生まれ、ゴールデンレッドリバーの子犬も加わり家族構成も変わった。クライアントのこのプロジェクトにかける熱情は並々ならぬものがある。以前にも述べたが、その情熱はビスコンティの映画、ノイシュバインシュタイン城を築城したルードゥイッヒ2世にも劣らぬ程すごいものだ。カーサ4はカーサ1の前庭の硬い岩盤をさらに15m掘り下げ、地下3階建てとし、現在内装仕上げ工事が行われているところである。

プールに水がはられた。

プールの水を通して寝室の窓に入ってくる光。窓の縁は金箔が貼られ、水の揺らぎの模様を映し出し、まるで別世界である。思った以上の効果で頭がくらくらし、7年前のアイディアが今、一住宅に本当に実現化してしまったことに自分でもシンジラレナーイ程である。
| u1arc | グランカスカダ | 20:05 | comments(0) | trackbacks(0) | -
グランカスカダ(Fallingwater)プロジェクト17


上の写真は、先日グランカスカダの現場に行って撮ってきたもの。クリスタルのテラスがほぼ完成した。下の写真は、滝の両側に5cm厚の黒のピサーラ(普通はもっと薄くして屋根スレート石板として使う)を8mの高さまで積み上げ、一階ホールから滝を眺めると黒の額縁となるように仕上げた。この写真で、滝と建物とのスケール感が掴めると思う。

夏の夕方、陽が落ちてから、真横に滝を眺めながらのこのテラスでの食事は最高の贅沢であろう。
『夢を現実とする』建築家本来の崇高な仕事を、制約の多い、我々が今生きている21世紀に実現させることは、たいへん困難ではあるが、この志を失わずに『アルキテクトの道』を歩いていきたいと思う。
| u1arc | グランカスカダ | 02:52 | comments(0) | trackbacks(0) | -
グランカスカダ(Fallingwater)プロジェクト16


写真はテラス付け根のアンカー付き高さ30cmU字鋼と無梁床スラブとの接合部。アンカーは無梁床スラブ梁部分の斜めに配筋された鉄筋に溶接されコンクリートを打って一体化した。
二つの黄色い看板は、カーサ1とカーサ2,3の二つのプロジェクトに与えられたシッチェス市の建設工事許可ライセンスの看板。上から許可ナンバー、プロモーター名,建設会社名、建築家名、建築エンジニア名、建築の種類が市の職員により手書きで書かれている。
このシッチェスの現場に来るたびに、二つの看板に書かれているArquitecte Suzuki Yuichiを見て、学生時代の夢が実現し、スペイン、バルセロナで
『アルキテクトの道』を歩んでいる(かなりでこぼこ道ではあるが)自分を実感する。  
| u1arc | グランカスカダ | 01:44 | comments(0) | trackbacks(0) | -
グランカスカダ(Fallingwater)プロジェクト15

カーサ2は写真のようにカーサ1のRC造とは異なり、鉄柱と25cm厚の無梁コンクリート床スラブから出来ている。無梁といっても床スラブに梁せいの低い25cmの梁が一体化したものである。いわゆるコルビュジェの提唱した柱と床スラブからなる『ドミノ工法』と呼ばれる構造方法が一般的である。普通の建物は先にRC造で柱と床スラブを造り、後で外壁はレンガを積んでいく工法を取っている。
カーサ2では、アンカーの入った30cmの高さのU字鋼をスラブの外周に取り付け、コンクリートを打って一体化している。そこから斜めに状の二本の鉄骨で底辺10m、高さ3.5mの鉄骨で組まれたテラスを二段に吊っているのである。このテラスのために新たに建築構造家と共にディテールを考え、施工図レベルまで起こし、サブコンの鉄骨業者捜すこととなった。この現場では、アーキテクトビルダーとして監理しているので、その都度かなり施工に踏み込んで問題を解決していかなければならないことがあった。三社目でようやくこのテラスを組める業者が見つかった。たいへんな作業であったが、このテラスデッキが吊られた姿を見た時はうれしかった。
| u1arc | グランカスカダ | 02:40 | comments(0) | trackbacks(0) | -
グランカスカダ(Fallingwater)プロジェクト14

滝のある正三角形と半円と四辺形プランの建物はカーサ1と呼び、道沿いにあるカッターの歯のように鋭くシャープな平行四辺形プランの建物をカーサ2と呼んでいる。2層のキャンティレバーのテラスは鉄骨むき出しで更にシャープであったが、オーナーの希望により木デッキを張リ少しおとなしい感じとなった。また、原設計にはなかったプールと幾度もの設計変更を重ね、5年がかりで完成した。このクリスマスからオーナーファミリー(夫婦+子供2人+ゴールデンレッドリバーの子犬)が住んでいる。奥さんも、ようやく自分の家に住むことが出来、ホッとしたようだ。このほかにもオーナーの義母さんが住むという平屋のカーサ3と、まだ現在建設中で、地下3階建てのカーサ4がある。4千m2の敷地の中のに延床面積合計3千m2の建物が建つ予定である。
| u1arc | グランカスカダ | 07:11 | comments(0) | trackbacks(0) | -
グランカスカダ(Fallingwater)プロジェクト13

工事が始まってすぐに、MBMの原設計では地下階にあった屋内プールを屋外にしたいというオーナーの意向を受け、大幅な設計変更をすることになった。その時の一枚のパースのスタディ。まるで、潜水艦が浮上したかのようなイメージで、オーナーの海の底に閉じ込められた建築に対する想いが、クジラの海面での潮吹きのごとく思い切り解き放たれたかのようで愉快であったことを思い出した。もう一度、建築法規、条例、構造とゼロから見直し、夫婦主寝室に水族館のようなプールの6m幅の窓を開けるというアイディアまで発展した。とても、設計の段階では考えられないような突飛おしもない考えである。正に造りながら考えてイメージを膨らませ、フィードバックし、現場で設計変更を重ね、建築デザインを更なる高みへ発展させて行くという、ガウディが晩年サグラダファミリアで実践していたような建設方法である。本来の建築(芸術)とは、このようにして生み出されるのかも知れない。現在巷で作られている建築スタイリストによって生み出される建築は、一瞬にしてモード化してしまうので、歴史に残るような世界遺産にはならないであろうと思う。
| u1arc | グランカスカダ | 21:45 | comments(0) | trackbacks(0) | -
グランカスカダ(Fallingwater)プロジェクト12

MBMの原設計では地下階にあった屋内プールが、写真のように四辺形プランの建物に並んで屋外に設計変更された。プールの底の部分は、四辺形の外周にあるガレリアの構造によって支えられている。また、夫婦主寝室部分に水族館の様な6m幅の窓を開け、プールの水を通した屋外の光が入って来るように計画した。
オーナーは、幼稚園に入ったばかりの自分の娘が、金魚のように泳いでいる姿をこの窓から見るのを今から楽しみにしている。
| u1arc | グランカスカダ | 07:09 | comments(0) | trackbacks(0) | -
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